2012年08月21日

特許法104条の3の抗弁の成否を判断する前提となる発明の要旨の認定

事件番号 平成23(ネ)10057
事件名 特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日 平成24年08月09日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明,裁判官 八木貴美子,小田真治
特許法104条の3,特許法70条1項

(1) 発明の要旨の認定について
ア ・・・

イ 特許法104条の3は,「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者又は専用実施権者は,相手方に対しその権利を行使することができない。」と規定するが,同条に係る抗弁の成否を判断する前提になる発明の要旨は,特許無効審判請求手続において,特許庁(審判体)が,無効の有無を判断する前提とする発明の要旨と同様に認定されるべきである。
 そして,本件のように,「物の発明」であり,かつ,その特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている場合における「発明の要旨」についても,前述した特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定と同様に認定されるべきである。すなわち,
@ 発明の対象となる物の構成を,製造方法によることなく,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときは,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと認定されるべきであるが,
A 上記@のような事情が存在するといえないときは,その発明の要旨は,記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきである。

 この場合において,上記@のような事情が存在することを認めるに足りないときは,これを上記Aの「特許請求の範囲に記載された方法により製造された物」に限定したものとして,当該発明の要旨を認定するのが相当である。
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発明の要旨の認定(特許法70条1項)

事件番号 平成23(ネ)10057
事件名 特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日 平成24年08月09日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明,裁判官 八木貴美子,小田真治
特許法70条1項,2項

(1) 発明の要旨の認定について
ア 特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について,特許法70条1項は「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない」と,同条2項は「前項の場合においては,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする」と,規定する。
 特許権侵害を理由とする差止請求又は損害賠償請求が提起された場合にその基礎となる特許発明の技術的範囲を確定するに当たっては,「特許請求の範囲」記載の文言を基準とすべきである。特許請求の範囲に記載される文言は,特許発明の技術的範囲を具体的に画していると解すべきであり,仮に,これを否定し,特許請求の範囲として記載されている特定の「文言」が発明の技術的範囲を限定する意味を有しないと解釈することになると,特許公報に記載された「特許請求の範囲」の記載に従って行動した第三者の信頼を損ねかねないこととなり,法的安定性を害する結果となる。
 本件のように「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている場合,当該発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定されるものとして解釈・確定されるべきであって,特許請求の範囲に記載された当該製造方法に限定されることなく,他の製造方法をも含むものとして解釈・確定されることは許されない。

 もっとも,本件のような「物の発明」の場合,特許請求の範囲は,物の構造又は特性により記載され特定されることが望ましいが,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときには,発明を奨励し産業の発達に寄与することを目的とした特許法1条等の趣旨に照らして,その物の製造方法によって物を特定することも許され,同法36条6項2号にも反しないと解される場合もある。そして,上記のような事情が存在することが立証された場合にあっては,発明の技術的範囲は,特許請求の範囲に特定の製造方法が記載されていたとしても,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと解釈され,確定されると解すべきである。

 そして,これを,特許権侵害訴訟における立証責任の分配の観点から整理すると,物の発明に係る特許請求の範囲に,製造方法が記載されている場合,特許請求の範囲は,その記載文言どおりに解釈するのが原則であるから,「発明の技術的範囲が特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されない」旨を主張する者において,「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である」ことについての立証を負担すべきであり,その旨の立証を尽くすことができないときは,発明の技術的範囲を特許請求の範囲の文言に記載されたとおりに解釈・確定すべきことになる。
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2012年08月14日

釣りゲームに著作物性を認めなかった事例

事件番号 平成24(ネ)10027
事件名 著作権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年08月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人,荒井章光

 また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。
 そして,同心円の態様は,・・・具体的表現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,・・・,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,・・・,同心円の存在が強調されている点,・・・,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,・・・変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。

ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。

 そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,・・・,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。

 以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない
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商品を買い付けた代表取締役に、登録商標の調査確認をしなかったことについて重大な過失がないとされた事例

事件番号 平成24(ワ)6732
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成24年07月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史,石神有吾
会社法429条1項

 原告は,被告会社の代表取締役の被告Aは,被告会社の業務執行として,自ら中国に赴くなどして,製造事業者から被告商品を買い付け,輸入を行っていたものであるところ,電化製品の輸入販売事業に関わる者であれば,被告商品に付された被告標章2を見れば,これが他者の商標ではないかとの疑いを持ち,調査確認すべきことは当然であり,被告会社が被告商品を販売する行為が,原告の本件専用使用権を侵害する行為であることを容易に知り得たものであるから,その職務を行うについて悪意又は重大な過失(会社法429条1項)があった旨(請求原因(4))主張する。

 そこで検討するに,会社法429条1項は,取締役等の会社の役員等が,会社に対する善管注意義務及び忠実義務を負うことを前提として悪意又は重大な過失によってこれらの義務に違反する任務懈怠行為を行い,これによって第三者に損害を被らしめた場合において,その損害賠償義務を負うことを定めた規定であると解されるところ,本件全証拠によっても,被告Aにおいて本件登録商標の存在を知りながら,あえて被告会社に被告標章2が付された被告商品を輸入及び販売させたことを認めるに足りない。また,本件登録商標が周知であったことをうかがわせる事情も本件の証拠上認められないことに照らすならば,被告Aにおいて,被告商品に付された被告標章2を見て他者の登録商標ではないかとの疑いを持ち,調査確認をしなかったことについて,過失はともかく,重大な過失があったとまで認めるに足りない

 したがって,被告Aが故意又は重大な過失によって被告会社に対する任務懈怠行為を行ったものと認めることはできないから,原告の上記主張は,採用することができない。
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請求期間を徒過した出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求

事件番号 平成23(行ウ)728
事件名 出願取下げを削除する手続補正書却下の処分に対する処分取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月20日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 その他
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 東海林保、裁判官 田中孝一,足立拓人
特許法195条9項,10項,11項

第2 事案の概要
1 本件は,原告らが,自ら行った特許出願について出願取下書を提出した後,特許庁長官に対し,同特許出願の審査請求手数料に係る既納手数料返還請求書を提出し,また,同出願取下書の全文を削除する旨の手続補正書を提出したところ,いずれも特許庁長官から却下処分を受けたことから,これらの処分が違法であると主張して,被告に対し,同手続補正書に係る却下処分の取消し(第1事件)及び同既納手数料返還請求書に係る却下処分の取消し(第2事件)をそれぞれ求める事案である。
・・・

第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件補正書却下処分の適法性)について
(1) 前記第2,2(1)ウのとおり,本件特許出願は,原告らが平成21年9月24日付け本件取下書を提出したことにより取り下げられているから,それに伴って,特許庁における本件特許出願に係る手続は終了したものと解される。
 そうすると,その後に,原告らが本件取下書の全文を削除するとして提出した本件補正書は,特許庁に係属していない手続について補正をしようとするものであるから,特許法17条1項本文に反する不適法なものであり,かつ,その補正をすることができないものであった
と認められる。
 したがって,特許庁長官が特許法18条の2第1項に基づき本件補正書に係る手続を却下した処分(本件補正書却下処分)は,適法というべきであって,同処分の取消しを求める原告らの主張は理由がない。
・・・
2 争点(2)(本件返還請求書却下処分の適法性)について
・・・
(2) この点に関して,原告らは,被告が本件審査請求料を返還しないことが不当利得に該当する旨主張するが,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料の額は,法定どおりの適正額であったのであるから,その納付が法律上の原因を欠くものとはいえず,被告がこれを収受し,原告らに返還しないことが不当利得に当たるとは認められない。

 また,原告らは,原告らが出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求権を過失で行使しなかったことが過誤であるから,過誤納に関する特許法195条11項の規定に基づいて返還請求ができるとも主張するが,同条項の「過誤納」とは,過大な額の手数料が納付された場合や,手数料を納付すべき理由がないのに手数料が納付された場合など,その手数料の納付が当初から法律上の原因を欠き,納付した手数料を被告が収受することが不当利得となるような場合をいうものと解されるところ,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料は適正額であり,それが不当利得に該当することはないのであるから,これを同条項の「過誤納」に当たると解する余地はない

 このことは,特許法が,過誤納に係る規定(特許法195条11項)とは別に,出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求について,同条9項の規定を設けていることからも明らかである。
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2012年08月13日

阻害要因を認めなかった事例

事件番号 平成23(行ケ)10390
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人,齋藤巌
実用新案法3条2項

ア 引用例には,本件考案1の「造花」に相当する揮散体は,「その材質として,上記の溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであればいずれのものでも使用でき」と記載され,その具体例として,「樹脂,パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料」を用いることができることが記載されている(【0010】)。
 引用例には,ソラの木の皮等の天然素材については明記されていないが,ソラの木の皮等の天然素材も,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果を有することは明らかであり,上記のとおり,ソラフラワーは,従来周知の造花である。そうすると,ソラの木の皮等の天然素材が記載されていないとしても,引用考案における花弁部の集合体である揮散体に代えて,ソラフラワーを適用することができる

イ このように,引用考案の「揮散体」を,これと同様の作用・機能を有する周知のソラフラワーに置き換える動機は十分に存在し,それを阻害する要因も存在しないから,相違点1に係る構成は,きわめて容易に想到できるものである。
 そして,本件考案1が奏する作用効果,すなわち,ソラの木の皮で作製されたものを用いることにより,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果も,引用考案等から予測できる範囲内のものにすぎず,格別のものとは認められない。
・・・

ア 原告は,引用例は,造花の材質として,数多くの例を挙げながら,従来周知の天然素材については一つも挙げていないことを理由に,ソラを含む天然素材を引用考案の造花に適用できないとする阻害要因が存在する旨主張する。
 確かに,引用例(【0010】)には,揮散体の材質として,ソラを含む天然素材について明示されていないが,「揮散体は,その材質として,上記の溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであればいずれのものでも使用でき」るとした上で,紙や布を例示しているにすぎないから,それ以外の材質を何ら排除するものではない。そして,従来周知のソラを含む天然素材も,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果を有するもので,「溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができる」ものであるから,天然素材が例示されていないことをもって阻害事由があるとはいえない

同じ実用新案登録の無効審決に係る別訴(引用例異なる。)において阻害要因を認めた事例はここ(下)
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阻害要因を認めた事例−否定した事項を要素とする副引用例の組み合わせ

事件番号 平成23(行ケ)10389
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人,齋藤巌
実用新案法3条2項

(1) 相違点1について
 本件考案1と引用考案との相違点1は,造花に関して,本件考案1では,「ソラの木の皮で作製した」ものであるのに対して,引用考案は,花芯付属品(おしべ等),花弁,額とからなる花形の形態からなる点である。

(2) 容易想到性
ア 前記2によれば,引用考案の気散管は,・・・という機能を有する。
 気散管は,中空のノズル内に収容され,キャップに取り付けられた花弁等と接することはない。芳香の発散は,専ら気散管の上端部のみによって行われ,・・・,花弁からは芳香が発散されない。このように,引用考案は,芳香剤は気散管から気散するものであって,花形の形態から気散するものではない

 これに対し,ソラの木の皮で形成されたソラフラワーは,花全体に芳香剤が浸透して,花全体から芳香が発散されるものと解され,ソラの木の皮から成る花弁部の細かい組織により,液体芳香剤が緩やかな速度で根本から先端の方へ浸透していくのであるから,芳香を発散しない引用考案の花弁とは機能的に相違する

イ また,・・・。このように,引用考案は,・・・,気散管の上端部をほぐすことによって形成された花芯のみから芳香を発散させることを技術的思想の中核とするものである。
 したがって,引用考案においては,芳香の発散も,花の一部から行われるにとどまり,花弁や花全体から芳香を発散させるという技術的思想は存在しない

ウ しかも,引用考案における気散管が,花弁等と接しないように構成されているのは,気散管を挿抜する際,気散管中の芳香剤が花弁等に付着しないようにするという積極的な理由に基づくものであり,そのために,気散管を敢えて中空のノズル内に収容しているものと認められる。花弁への芳香剤の付着を防止することは,花弁を含む花全体からの芳香の発散を否定することを意味するのであるから,この点において,花弁を含む花全体から芳香を発散させるソラフラワーを適用することの阻害要因が存在する

エ 以上のように,機能及び技術的思想が異なることに照らせば,仮にソラフラワーが周知であったとしても,これを引用考案に適用することの動機付けがないばかりか,むしろ阻害要因があるというべきである。

同じ実用新案登録の無効審決に係る別訴(引用例異なる。)において阻害要因を認めなかった事例はここ(上)
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2012年08月10日

登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用が認められた事例

事件番号 平成24(行ケ)10080
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人,齋藤巌
商標法50条

2 商標の使用の有無について
(1) 商標の同一性
 商標権者が指定商品について登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明した場合には,商標法50条による登録商標の取消しを免れることができるところ,本件商標と本件使用商標を対比すると,やや横長の四角形で上方の橙色から下方の黄土色にグラデーションが施された地色や,上方の「First Tap」の欧文字から下方の「Sirop d’erable Pur」の欧文字に至る文字や図形の構成は,以下の点を除いて,おおむね一致している。すなわち,本件使用商標にあっては,「Fine Maple Products」の語末の右下方に「TM」の欧文字が記載されていない点において異なるが,商標全体からみて微細な部分にすぎない
 また,本件使用商標には,「Sirop d’erable Pur」の欧文字の下方にシリアルナンバーや「Extra Light」等の欧文字等が記載されているが,これらは本件使用商標の下部において商品の番号や品質を付加して表示するものにすぎず,これらの表示自体が格別の出所識別機能を有するものではない

 そうすると,本件商標と本件使用商標とは,少なくとも外観においてほぼ同一のものであり,称呼及び観念においても社会通念上同一のものと認めるのが相当である。
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前判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)

事件番号 平成23(行ケ)10333
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
前判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)

特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理,審決をするが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理,審決には,同法33条1項の規定により,取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって,再度の審判手続において,審判官は,当事者が取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返しあるいはその主張を裏付けるための新たな立証を許すべきではなく,取消判決の拘束力に従ってした審決は,その限りにおいて適法であり,再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることはできない(最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三小法廷判決民集46巻4号245頁)。

イ これを本件についてみると,前判決は,前審決が認定した引用例1に記載された発明(本件審決が認定した引用発明と同じものである。)を前提として,前審決が認定した相違点5(本件審決が認定した相違点5と同じものである。)に係る本件発明1の構成のうち,
@ ・・・とする構成についても,
A ・・・1.1≦X≦4.3を満足する大きさになるという構成についても,
引用発明との間に相違はないと判断して,引用発明に基づいて容易に発明することはできないとした前審決を取り消したものであるから,少なくとも,引用発明の認定及び相違点5に係る判断について,再度の審決に対する拘束力が生ずるものというべきである。

 また,前判決は,引用発明から算出した関数Xは,本件発明2のXの数値範囲(1.2≦X≦3.9)及び本件発明3のXの数値範囲(1.3≦X≦3.5)についても充足することを示した上で,本件発明2及び3についても,これを容易に発明することができないとした前審決を取り消したものであるから,前判決は,本件審決が認定した相違点6に係る本件発明2の構成についても,相違点7に係る本件発明3の構成についても,本件発明1と同様に,引用発明との間に相違はないと判断したものということができる。したがって,前判決のこれらの判断についても再度の審決に対する拘束力が生ずるものというべきである。

 以上によれば,本件審決による引用発明の認定並びに相違点5ないし7に係る判断は,いずれも前判決の拘束力に従ってしたものであり,本件審決は,その限りにおいて適法であり,本件訴訟においてこれを違法とすることはできない。
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先使用による通常実施権が認められた事例

事件番号 平成24(ネ)10016
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 部眞規子,齋藤巌
先使用による通常実施権(特許法79条)

(1) 先使用に係る発明の成否について
 先使用による通常実施権が成立するには,まず,これを主張する者が特許出願に係る発明の内容を知らないで,当該特許出願に係る発明と同一の発明をしていること,あるいは,発明をした者から知得することが必要である(特許法79条)。
 そして,発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作であり(同法2条1項),一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものであるが,発明が完成したというためには,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要し,またこれをもって足りるものと解するのが相当である(最高裁昭和49年(行ツ)第107号同52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。
(2) そこで,以上の観点から,被控訴人製品に係る発明が完成していたか否かを検討すると,前記前提となる事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
 ・・・
(5) 通常実施権の成否について
 前記(2)イ(ア)のとおり,大阪ガスは,遅くとも,本件特許の優先権主張日の約8年前である平成11年3月頃から,本件特許発明2の技術的範囲に属するBPEFを製造していることからすれば,大阪ガスは本件特許発明2の内容を知らないで自らその発明をしたものであることは明らかであるということができる。また,前記(2)ア(ウ)のとおり,被控訴人は,大阪ガスから被控訴人製品に係る発明の内容を知得したものであることについても優に認めることができる。
 したがって,被告は,本件特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得し,優先権主張に係る先の出願の際現に日本国内において本件特許発明2の実施である事業をしていたことが認められるから,本件特許発明2に係る本特許権について,先使用による通常実施権を有するものというべきである。
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2012年08月05日

客観的数値等による裏付けを欠く相対的な効果

事件番号 平成23(行ケ)10304
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月19日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳・武宮英子
特許法29条2項 顕著な効果

(イ) 原告は,本願発明に特有の顕著な効果として,複数の小室をそれぞれの端面で互いに仕切る複数の仕切り壁により,上部構成要素の構造的強度が確保され,かつ,端面/仕切り壁に設けられた複数の開口により,歩行時のポンプ効果で,空気の循環や水蒸気の外部への排出が促進されることを主張する。

 しかし,原告主張の効果は,本願明細書において客観的な数値等が示されたものではなく,相対的である甲2の運動靴1においても,縦溝及び横溝からなる凹部の大きさや個数を調整するによって,底部材2の内部から運動靴1の外部へ排出される水蒸気の総量が増加し得るものと推認されるから,本願発明の効果は,引用発明に甲2記載の事項を適用しても得られないとの原告の主張は理由がない。

ウ 以上のとおり,原告の主張はいずれも理由がなく,相違点1に関する審決の容易想到性の判断に誤りは認められない。
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