2012年10月30日

映画の著作物であるCM原版に対する著作権法29条1項の適用

事件番号 平成24(ネ)10008
事件名 各損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成24年10月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子,小田真治
著作権法29条1項

 著作権法29条1項は,「映画の著作物・・・の著作権は,その著作者が映画制作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは,当該映画製作者に帰属する。」と,また,同法2条3項は,「この法律にいう「映画の著作物」には,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物を含むものとする。」旨規定する。
 本件ケーズCM原版が映画の著作物である以上(当事者間に争いはない。),その製作目的が,商品の販売促進等であることを理由として,同CM原版について同法29条1項の適用が排除されるとする原告の主張は,その主張自体失当であり,採用の余地はない。

 のみならず,以下のとおり,本件ケーズCM原版の具体的な製作目的,製作経緯等を検討してみても,本件ケーズCM原版について,映画の著作物の著作権に関して当該映画の製作者に帰属させる旨定めた同法29条1項の規定の適用を排除すべき格別の理由はない。
 すなわち,同法29条1項は,映画の著作物に関しては,映画製作者が自己のリスクの下に多大の製作費を投資する例が多いこと,多数の著作者全てに著作権行使を認めると,映画の著作物の円滑な利用が妨げられることなどの点を考慮して,立法されたものである。

 ところで,本件ケーズCM原版についてみると,
  同原版は・・・短時間の広告映像に関するものであること・・・,
  他方,製作者たる広告主は,原告及び被告アドックに対し,約3000万円の制作費を支払っているのみならず,別途多額の出演料等も支払っていること,
  同広告映像により,期待した広告効果を得られるか否かについてのリスクは,専ら,製作者たる広告主において負担しており,製作者たる広告主において,著作物の円滑な利用を確保する必要性は高いと考えられること
等を総合考慮するならば,同CM原版について同法29条1項の適用が排除される合理的な理由は存在しないというべきである。広告映像が,劇場用映画とは,利用期間,利用方法等が異なるとしても,そのことから,広告映像につき同法29条1項の適用を排除する合理性な理由があるとはいえない。

 原告は,本件のような広告映像の場合,制作会社が,CM原版のプリント(複製)を受注し,その収益により制作費の不足分を補うという商習慣が確立していることから,本件ケーズCM原版に係る複製権は原告に帰属すると解すべきである旨主張する。
しかし,制作会社がCM原版のプリント(複製)をする例があったとしても(甲26,28,46),本件において,原告が,当然に,そのプリント代で制作費の填補を受ける権利を有していると認定することはできない
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動機付けを認めた事例

事件番号 平成24(行ケ)10129
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法29条2項 動機付け

 そして,甲第1号証に記載された甲1発明も,甲3発明と同じく,運転者の操作(運転)傾向を把握,分析するために車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,技術分野が共通する。

 当該発明によって解決しようとする技術的課題も
  甲1発明が運転者の操作(運転)傾向をより適切に把握するべく,「道路状況に左右されないで,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集することのできる車両運行データ収集装置を提供すること」にあるのに対し,
  甲3発明は「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」(2頁)こと等にあって,
運転者の操作(運転)傾向を分析する上でより有用,効果的な情報を収集,記録するための手段を提供するためのものである点で重なり合うものである。

 そうすると,運転者の操作(運転)傾向を把握,分析するために車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者にとっては,甲1発明を甲3発明に適用する動機付けがあると解して差し支えない
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2012年10月29日

特許請求の範囲の用語の意義を確定する際に、特定の段落の表現のみにこだわらず全体を通読して吟味すべきとした事例

事件番号  平成24(行ケ)10040
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月15日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法36条6項2号 (明確性の判断に際し明細書の誤った説明記載よりも技術常識を優先)

2 ・・・
 段落【0040】には「“反り”の定義」として,「中心に対するロール縁部の放物線状直径増大」であるとの記載があるが,その「反らされている」の意味を,段落【0040】の「“反り”の定義」のとおり,中心に対してロール縁部が放物線状に直径が増大すると解したとすると,ロールが湾曲した状態では,ロールギャップ内の形状は下記の【図1】に示すように線状とはならないため,フィルムの中央部分の厚さが大きくなり,全幅にわたって均一な厚さ分布とすることができず,ロールが「フィルムの全幅にわたって均一な厚さ分布とするために」反らされていることと矛盾するよって,「反らされている」の意味を,段落【0040】の「“反り”の定義」のとおり解することは,不自然である。一方,「反らされている」の意味を,上記技術常識のとおり,ロールの縁から中央に向かって放物線状に直径が増加すると解したとすると,ロールが湾曲した状態では,ロールギャップ内の形状は下記の【図2】に示すように線状となり,フィルムの全幅にわたって均一な厚さ分布とすることができ,上記のような矛盾を生じることがない。
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3 発明の詳細な説明を理解するに際しては,特定の段落の表現のみにこだわるべきではなく,全体を通読して吟味する必要がある。「反らされている」との請求項の文言において,これが技術的意味においてどのような限定をしているのかを特定するに際しても,同様である。
 上記2で分析したところによれば,請求項5における「ロール(110)が反らされている」について,特許請求の範囲の記載のみでは,具体的にどのように反らされているのか明らかでないものの,発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すれば,その意味は明確である
というべきである。発明の詳細な説明に記載された「“反り”の定義」が誤りであるとしても,当業者は,上記「“反り”の定義」が誤りであることを理解し,その上で,本願発明5における「ロール(110)が反らされている」の意味を正しく理解すると解することができるというべきである。上記「“反り”の定義」が誤りであるからといって,請求項5が明確でないということはできない。

(所感)
 一見したところでは、当業者でも最終クレームの用語の意味するところを裁判なしには確信を持って確定できない事例のように感じる。
 裁判なしに独占権の境界を明確にして競業他社の萎縮効果を排除することで、低コストで産業の発展に資する特許を生み出すというのが法36条6項2号の使命であるはず。
 この事例に類する難解なクレームを適法とすると、出願人は救済されるというメリットはあるが、裁判なしでどこまでが権利侵害か確信をもてない競業会社、特許庁の審査・審判、に萎縮効果が生じる。結果、このような「難解なクレーム」が量産され、萎縮効果がじわじわと拡大し、特許制度のコストがますます高くなっていくのではないかと懸念する。
 顕在化している出願人の救済が優先され、潜在的なコスト高のデメリットは問題とされていないということかも知れない。
posted by ごり at 03:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法36条6項

特許請求の範囲の用語の明細書中の定義

事件番号 平成24(ネ)10018
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子

 しかしながら,特許請求の範囲は,特許法施行規則24条の4により様式第29の2により作成しなければならないとされ,様式第29の2において,「用語はその有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する。ただし,特定の意味で使用しようとする場合において,その意味を定義して使用するときは,この限りでない。」(備考9)とされているから,請求項に記載された用語(発明特定事項)の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は,その用語を解釈するに当たってその定義又は説明によることとなる。そして,本件明細書2には,「本明細書において,「上半身部品」とは,腰より上の部分をいい,「下半身部品」とは腰から下の部分(腰部含む)をいうものとする」(【0001】)と記載され,「上半身部品」と「下半身部品」が定義されているから,本件発明2の「上半身部品」及び「下半身部品」の意味は,上記定義によることになる。控訴人の上記主張は,本件明細書2に定義された用語の意味に反するものであり採用することができない。

イ 控訴人は,被控訴人自身が,その広告等(甲48〜54)において,「胸部骨格から上の部分に相当する部分(外皮)を「上半身パ−ツ」,腹部骨格から下の部分に相当する部分(外皮)を「下半身パ−ツ」と称していながら,本件訴訟において限定的に解釈すべきであると主張することは,いわゆる禁反言の法理に反し許されないとも主張する。
 被控訴人の上記広告等において,胸部骨格から上の部分に相当する部分(外皮)を「上半身パーツ」,腹部骨格から下の部分に相当する部分(外皮)を「下半身パーツ」と称していることが証拠上認められるが,そうであるからといって,上記アの説示に照らして,本件明細書2を解釈する際に,同広告等における用語の使用例に従わなければならない理由はない。被控訴人の主張が禁反言の法理に反するものということはできず,控訴人の上記主張も理由がない
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2012年10月28日

具体的実施例がなくとも他の発泡剤と同様であるとしてサポート要件を認めた事例

事件番号 平成24(行ケ)10016
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
特許法36条6項1号

 ・・・本願明細書に記載された発明は,発泡剤として成分a)HFC−365mfcを低沸点の脂肪族炭化水素等である成分b)と組み合わせて用いることを特徴とするポリウレタン硬質フォームを製造する方法で,そのような発泡剤を用いることにより,低温において熱伝導率が低く,熱遮断能を有するポリウレタン硬質フォームが得られるという効果を有することが判明したというものである。
 成分b)としては,低沸点の脂肪族炭化水素等である具体的化合物が多数列挙され,本願発明のHFC−245faは,ひとまとまりの一定の発泡剤の中で有利なものとして記載され,実施例においても,HFC−152aを用いた場合(例1a),HFC−32を用いた場合(例1b),及びHFC−152a及びCO2を用いた場合(例1c)が記載されており,それらを同等に扱うことができないとする事情は見いだせないから,HFC−245faを用いた実施例の記載がなくとも,これを成分b)として使用することができると解すべきである。

 そうすると,特許法36条6項1号の「サポート要件」の判断にあたっては,本願明細書において,成分b)としてHFC−245faを選択することの技術的意味や作用効果について,更なる記載を求めるべき理由はなく,また,成分b),特にHFC−245faが発泡剤として使用できると認識できない事情も見いだせないので,発泡の機構などに関して,更なる説明を求めるべき理由もない。
posted by ごり at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法36条6項

特許発明の寄与率を10%とした事例

事件番号 平成23(ワ)3850
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
特許法102条1項

以下の事情からすれば,本件特許発明の寄与率は,10%とするのが相当である。
(1)本件特許発明の有用性
ア 本件特許発明の技術的意義
・・・
そして,前述したところによれば,本件特許発明の本質的特徴は,このような用途を要する補強リブにより突条を保護し,ピンホールの発生を防止したところにあることが認められる。

イ 代替技術の存否
・・・
そうすると,乙10発明は,本件特許発明と同様の課題を解決するための発明であるとはいえるものの,その実施状況や効果について認めるに足りる証拠もないから,本件特許発明を代替するものといえるかは不明である。

ウ 本件特許発明の作用効果
 証拠によれば,原告が原告製品の製造販売を開始した平成8年より前の平成7年度におけるクレーム総数●●●件のうち折り溝部からの漏れは●●件であったこと(甲26),これに対し,平成11年度における折り溝部からの漏れに関するクレームは●件であり,クレーム総数に占める割合は●●●●%であったこと(甲27の2)が認められる。これらのことからすれば,本件特許発明は,ピンホールの発生を防止するという課題解決において,相応の効果を奏するものであることが認められる。
 もっとも,原告製品及び被告製品の1年当たりの販売数量と対比すると,上記クレーム件数は,総数としてみても極めて数が少ないものである。

(2) 原告による宣伝広告
 証拠(甲23の1ないし25の2)によれば,原告は,原告製品の販売広告において,折り畳み自在であること,軽量であること,その他容器の信頼性を高める工夫がされていることなどとともに,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果についても相当の割合を割いていることが認められる。
 また,軟質プラスチック折り畳み容器自体は,比較的単純な構造のものであり,原告も約42年間にわたり製造販売を継続してきたこと(甲28)などからすれば,相当に成熟した技術分野であること,そうした状況において他の競合製品と差別化するために,本件特許発明が相応の価値を有することは認められる。
 他方において,上記原告の宣伝広告の内容から明らかなとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されることが認められるし,原告の宣伝広告においても,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果については「細部機能改良」の項に記載されていること及び前記(1)ウで検討したところからすれば,本件特許発明の販売における寄与について,過大に評価することはできないものというべきである。

(3)被告による宣伝広告
 証拠(甲3)によれば,被告が,「20リットル改良品(20A)のご提案について」と題する書面を顧客らに送付したこと,同書面は,被告現行品から本件特許発明に関する構成を備えた被告製品に改良したことを報告し,購入を促す内容のものであることが認められる。
 このことからすれば,被告製品についても本件特許発明の実施による販売への寄与があったものと推認される。
 前記(3)のとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されるものであるとしても,被告製品における本件特許発明の販売における寄与率についても,原告製品における寄与率と同等のものと解するのが相当である。

同一の技術分野の置換可能な技術的手段、「程度の差」と阻害要因

事件番号 平成24(行ケ)10023
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌
特許法29条2項 動機付け、阻害要因

 そして,引用発明と引用例2に記載された発明は,いずれも,本件発明と技術分野が同一又は相互に関連する発明であるから,その一の発明に置換可能な技術手段があるときは,他の発明に当該技術手段を適用しようと試みることは,当業者の通常の創作能力の発揮ということができ,前記のとおり,引用発明において,切断片の取り出し除去作業を容易にする等の目的で,カッターとして引用例2に記載された回転円弧状又は球面状のカッターを採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。

原告は,引用例1は,復旧面積内に埋め込む材料を少なくすることが,その技術的思想の1つとされているから,円筒状の切り込みを与える円形カッターを用いる場合よりも復旧面積がより広くなる引用例2記載の回転円弧状のカッターを採用することは,むしろ阻害要因があるというべきである旨を主張する。
 しかしながら,引用発明は,復旧面積を極限まで狭くすることによって達成されているものではないし,引用発明における円形カッターに代えて,引用例2に記載された回転円弧状又は球面状カッターを使用したときに,その復旧面積が当然に広くなるというものではなく,仮に広がるとしても程度の差にすぎないと解される。当業者は,使用するカッターの性質や作業性等を適宜勘案し,その現場の要請に則して妥当な復旧面積を決定し,マンホール蓋枠取替え工法を実施するものであるところ,復旧面積の広狭は,その現場に合ったマンホール蓋枠取替え工法を実施しようとすれば,その現場ごとに,一定程度,変動するものであるから,復旧面積が仮に広がるとしても,その一事をもって,引用発明に引用例2に記載されたカッターを採用することに,阻害要因があるとまでは認められない
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2012年10月23日

新規事項の追加ではないとした事例−用語の一般的意味、技術常識、審判請求書における主張も考慮

事件番号 平成23(行ケ)10383
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、古谷健二郎
特許法17条の2第3項

1 本件補正における「反転」の技術的意義について,当初明細書の記載及び出願経過に照らして検討する。
(1) 本件補正における「反転」は,「前記閉鎖または開放を行う」に際しての「前記膜部」の動きに関わるものであるから,ダイアフラム弁の膜部22(22a,22b,22c)の挙動に関わるものと理解するのが自然である。
当初明細書等(甲2)には,・・・,以下の記載がある。
 ・・・
 上記記載には,一貫して高圧流体の供給制御を行う場合に,弁体部と膜部との境界に応力集中が発生し劣化が急速に進むという問題への対処方法が述べられており,そのような問題が薄膜の反転動作を伴うローリングダイアフラム弁においても発生すると理解しうる記載はない。
 そして,当初明細書には,本願発明の実施例として図1及び図2が,背景技術として図3が記載されており,いずれもローリングダイアフラム弁ではない通常のダイアフラム弁である。

(2) 本件審判請求書(甲3)には,以下の記載がある。
・・・
 以上の記載からすると,審判請求書において原告は,@「反転」とは,周知のように,膜部の一部が天地を逆転すること,との意味であること,Aロールダイアフラム式ポペット弁は,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うのに対して,通常のダイアフラム式ポペット弁は,そのような反転をさせることなく開閉を行うものであること,B本願発明は,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うロールダイアフラム式ポペット弁とは異なるものであることを述べていることが理解できる。

2 ところで,一般に,「反転」とは,「・・・。」という意味である(株式会社岩波書店,広辞苑第六版)。
 ・・・
 ダイヤフラム弁の技術領域において,通常のダイヤフラム弁と,それとは異なり「ロール及び非ロール動作」を伴うローリングダイヤフラム弁とが存在することは,引用例が公開された平成13年6月29日時点において,特段の説明を要しない技術常識であったことが理解できる。

上記の「反転」の一般的意味及び技術常識に照らし,また,審判請求書における原告の主張を合わせると,本件補正によって追加された「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」の構成は,「膜部の一部が天地を逆転することがなく,具体的には,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うことなく」との意味であることが明らかである。

4 以上によれば,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うものではないものである,という程度の意味で膜部の一部で天地が逆転しないものであることと理解すべきであり,係る事項を加えることは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる。
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ソフトウェアの翻訳したメニュー表示の著作物性

事件番号 平成24(ネ)10053
事件名 訂正公告掲載請求控訴事件
裁判年月日 平成24年10月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗,古谷健二郎

3 本件記事には,本件ソフトウェアの画面レイアウトの例が記載されている。控訴人の主張によれば,控訴人は外国語で作成されたソフトウェアである「EarMaster」の日本語版である本件ソフトウェアの作成に関与したものであって,控訴人が行ったのはメニューの日本語化とヘルプファイルの作成の一部であったというのである。しかしながら,本件記事中の日本語メニューは製品紹介として掲載されているのであり,本件記事は,メニューも含めて本件ソフトウェアの機能を普通に表現したにとどまる。メニューの日本語表示は小さく読み取り難く,かろうじて読み取れたとしても,日本語化において創作性のあるものとは認められない。また,ヘルプファイルの内容は本件記事には記載されていない。したがって,被控訴人が本件記事に本件ソフトウェアの画面レイアウトの例を記載することによって,控訴人の著作権又は著作者人格権が侵害されたということはできない。
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ソフトウェア製品紹介記事の出版社の著作権等の権利帰属の調査義務

事件番号 平成24(ネ)10053
事件名 訂正公告掲載請求控訴事件
裁判年月日 平成24年10月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗,古谷健二郎


 控訴人は,本件記事の読者はイーフロンティアに本件ソフトウェアの販売をする権利があると信じると主張するが,製品をめぐる権利関係には契約関係を始めとする様々な事情があることも考えられるから,記事中に製品をめぐる権利関係について何ら記載がないにもかかわらず,新製品紹介記事の読者が,記事中に発売元として記載されている者に著作権等の特定の権利が完全に帰属し,他者の権利を何ら侵害していないと理解するのが通常であるということはできない

 控訴人は,本件記事を掲載するにあたり,被控訴人は本件ソフトウェアの権利関係について調査をすべきであったと主張する。しかし,記事中に製品をめぐる権利関係についての記述がない新製品紹介記事を掲載するに際し,記事中に発売元として記載される者に関する著作権等の権利帰属についての調査義務があるものと解することはできない
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2012年10月21日

受験対策本の著作物性、作品の一部についての著作物性の主張

事件番号 平成23(ワ)14347
事件名 著作権侵害停止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大 須 賀 滋、裁判官 小川雅敏,森川さつき

イ 前記(1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,原告書籍は,司法書士試験合格を目指す初学者向けのいわゆる受験対策本であり,同試験のために必要な範囲で民法の基本的概念を説明するものであるから,民法の該当条文の内容や趣旨,同条文の判例又は学説によって当然に導かれる一般的解釈等を簡潔に整理して記述することが,その性質上不可避であるというべきであり,その記載内容,表現ぶり,記述の順序等の点において,上記のとおり民法の該当条文の内容等を簡潔に整理した記述という範囲にとどまらない,作成者の独自の個性の表れとみることができるような特徴的な点がない限り,創作性がないものとして著作物性が否定されるものと解される。
・・・

(ウ) これに加えて,原告は,太字,アンダーライン,付点等による強調,枠囲み,矢印の使用,余白の取り方,イラストの使用等に表現上の特徴があるとも主張する。
・・・
そもそも,ある作品等の一部につき,複製等がされたとして著作権侵害を主張する場合においては,当該作品等の全体が上記の意味における著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分自体が思想又は感情を表現したものに当たり,かつ,当該部分のみから,作成者の個性が表現として感得できるものであることを要するものと解するべきであるから,原告書籍においても,その全体が著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分(原告書籍マーカー部分)について,著作物に該当することを主張すべきものと解される。
・・・
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著作権法41条の適用対象

事件番号 平成23(ワ)9722
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年09月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大 須 賀 滋、裁判官 小川雅敏,森川さつき
著作権法41条

 著作権法41条は,時事の事件を報道する場合には,その事件を構成する著作物を報道することが報道目的上当然に必要であり,また,その事件中に出現する著作物を報道に伴って利用する結果が避け難いことに鑑み,これらの利用を報道の目的上正当な範囲内において認めたものである。このような同条の趣旨に加え,同条は「写真,映画,放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合」と規定するのであるから,同条の適用対象は報道を行う者であって,報道の対象者は含まれないと解するのが相当である。
 そうすると,被告は,本件記者会見を行ったことが認められるものの,本件記者会見についての報道を行った者ではないから,著作権法41条の適用はないというべきである。
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著作権法32条1項の引用に当たるかどうかの判断事例

事件番号 平成23(ワ)9722
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年09月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大 須 賀 滋、裁判官 小川雅敏,森川さつき

 著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定するから,他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用して利用する方法や態様が,報道,批判,研究等の引用するための各目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である。
 ・・・
 このように,被告が名誉毀損と主張する部分が,本件各霊言の一部にすぎないことや,名誉毀損とは関係のない内容も多数含まれていることからすれば,本件各霊言全体を複製・頒布して利用した本件複製頒布行為について,上記の説明,批判,反論等の目的との関係で,社会通念に照らして正当な範囲の利用であると解することはできない
 ・・・
 本件DVD等は,被告の主張によれば,・・・本件記者会見の翌日に,原告の主張によれば本件記者会見の翌週に,記者会見に参加した報道関係者等に配布されたものである。しかも,・・・,被告は,・・・気がかりを生じ,その気がかりを解消するために本件DVD等を報道関係者等に送付する必要を感じ実行したものと認められるから,本件記者会見の席上においては,本件DVD等を,後日,記者会見における説明等に必要なものとして配布する旨を述べていなかったものと認められる。
 このような本件DVD等の配布の時期,本件記者会見当日における説明内容に照らせば,本件複製頒布行為が公正な慣行に合致するものと認めることもできない

posted by ごり at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権法

分割出願の要件、訴訟過程での実験結果の提出

事件番号 平成23(行ケ)10391
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子,小田真治

(2) 分割出願においては新たな特許出願はもとの特許出願の時にしたものとみなす(特許法44条2項)とされていることから,分割出願に記載された発明に係る技術的事項は,原出願の明細書に記載されていることを要する

 そこで,本件発明が,原出願の明細書に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。
 ・・・
 ・・・【0047】の記載に接した当業者は,【0047】の「フォトルミネセンス蛍光体」について,本件組成に属する蛍光体に限定されないと理解するとまでは容易に認め難い。

エ この点に対し,被告は,本件組成に属しない蛍光体についても,効果が得られる場合がある旨の実験結果(乙1)を提出する。しかし,分割が許されるためには,原出願の明細書に本件発明についての記載,開示があること(当業者において,記載,開示があると合理的に理解できることを含む。)を要するから,訴訟過程で提出された上記実験結果(乙1)をもって,前記の結論を左右することはできないというべきである(仮に,被告の主張,立証が許されるとするならば,原出願の明細書に本件発明について,何ら記載,開示がないにもかかわらず,第三者が,本件組成に属しない蛍光体に,効果が得られた旨の発見をした場合に,そのような蛍光体を包含する分割出願を,当然に許容することになって,不合理が生じる。)。
posted by ごり at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法40〜52条

特許法29条1項3号又は特許法29条2項の引用例適格性

事件番号 平成23(行ケ)10201
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子,小田真治
特許法29条1項3号又は特許法29条2項の引用例適格性

1 特許法29条1項3号又は同条2項違反についての判断の誤り(取消事由1)
について
(1) 甲1文献の引用例適格性についての判断の誤りについて
ア 特許法29条1項3号は,「特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明」は特許を受けることができないと規定する。ところで,同号所定の「刊行物に記載された発明」というためには,刊行物記載の技術事項が,特許出願当時の技術水準を前提にして,当業者に認識,理解され,特許発明と対比するに十分な程度に開示されていることを要するが,「刊行物に記載された発明」が,特許法所定の特許適格性を有することまでを要するものではない

 そこで,上記の観点から,甲1文献に記載された技術事項が,特許法29条1項3号所定の「特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明」に該当するか否かについて検討する。
・・・
エ 以上のとおり,甲1文献には,単一モード・ファイバーに多重モード・ファイバー増幅器を適用する光学増幅器において,単一モード・ファイバーと多重モード・ファイバー増幅器との間に,ファイバーモードを整合するためのインターフェース光学部品が設置され,多重モード・ファイバー増幅器に,入力信号を入力する入力信号源とポンプ光を入力するポンプ源が接続されていること,高品質の導波路及び適切なモード整合光学部品を使用して,多重モード・ファイバー増幅器の入力ポートにその基本モードの信号を入力し,多重モード・ファイバー増幅器によって増幅されたこの基本モードの信号エネルギーを,当該多重モード・ファイバー増幅器の全体を通して,その出力ポートまで保存することが開示されており,本件特許の優先日当時の当業者の技術水準によれば,その当時,インターフェース光学部品の構成や,基本モードの入射・保存のための方法などを含め,上記光学増幅器の構成は,当業者が理解可能な程度に明らかになっていたといえる。
 したがって,甲1文献には,本件発明と対比可能な程度に技術事項が開示されており,甲1文献に記載された発明は,特許法29条1項3号に規定する「刊行物に記載された発明」に該当するというべきである。
posted by ごり at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法29条の2

「明りょうでない記載の釈明」に一応該当するとした事例

事件番号 平成23(行ケ)10263
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子,小田真治
旧特許法134条の2第1項ただし書3号所定の「明りょうでない記載の釈明」

(2) 判断
ア 訂正事項2は,本件明細書の段落【0015】中の「,エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸(EDTPO),ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTPO)」を削除したものである。
・・・
(イ) 化学辞典等によると,「コンプレクサン」の意味については,@ ・・・(岩波理化学辞典第3版,化学大辞典3),A・・(入門キレート化学),B ・・・(第3版化学用語辞典),C・・・(標準化学用語辞典)とがあり,これらによると,当業者間で「コンプレクサン」の意味が一義的に明確であるとはいえない
 なお,「大辞泉 第1版」(甲2)には,「コンプレクサン」はキレート試薬の総称であるとの記載があるが,これは一般向けの説明にすぎず,当業者がこれに基づいて「コンプレクサン」の意味を理解するとは認め難く,同辞典に基づいて「コンプレクサン」の意義を確定することは相当ではない。
・・・
(ウ) 上記辞典等の説明をも参酌して,本件明細書の段落【0015】記載の化合物につき検討すると,・・・。したがって,訂正事項2により,上記ホスホン酸の2つの化合物を削除したとしても,段落【0015】に列挙された化合物には,・・・,上記@ないしCの「コンプレクサン」のいずれの説明とも符合しない化合物が含まれている
 以上によると,訂正事項2により,本件明細書の段落【0015】に例示された化合物から,本件明細書における「コンプレクサン」の意義が明確になるとまではいえない。しかし,訂正事項2は,少なくとも上記@ないしCの「コンプレクサン」には該当しない化合物を一部削除するものであるという点では,旧特許法134条の2第1項ただし書3号所定の「明りょうでない記載の釈明」に,一応該当するといえる。
・・・
 なお,上記のとおり,本件明細書の段落【0015】の記載は,コンプレクサン化合物の例示にすぎないのであるから,訂正事項2に係る訂正によって,本件発明の要旨に変更を来すものとはいえない。以上を前提として,以下の取消事由の判断においては,本件訂正明細書の記載に基づいて,検討することとする。
posted by ごり at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法134条の2

動機付けがなく、阻害事由があるとした事例

事件番号 平成23(行ケ)10320
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香,知野明

そもそも,引用発明は,上記のとおり,分岐先アドレスを出力することで,出力される実行情報の量を抑制することを目的とするものであるから,引用発明において,この目的を達成することが可能なアドレス計算部の出力する分岐先アドレスを用いるのに代えて,実行する命令のアドレス全てを出力するとの構成に至る動機付けがない

 むしろ,引用文献1の上記記載によれば,引用発明は,内蔵キャッシュがヒットしている場合,命令の実行状況がマイクロプロセッサのアドレスバスやデータバスに出力されない構成である上,常にマイクロプロセッサの実行情報をプロセッサの外部に出力することは,バスの競合が発生し,マイクロプロセッサの性能の低下を招くとの認識を前提としており,引用発明において,実行する命令のアドレス全てを出力するように構成することには,阻害事由があるといえる・・・
posted by ごり at 19:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法29条2項

2012年10月17日

均等論第2要件の判断事例

事件番号 平成24(ネ)10035
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年09月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人、齋藤巌

イ 第2要件
 前記のとおり,本件発明1は,従来方法では,各視線上に位置するボクセル毎の色度及び不透明度を互いに積算する演算過程の高速化を図るために,一部のボクセルに関するデータを間引いて演算を行っていたため,可視化した画像において,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現することができなかったことに鑑みて発明されたものである。本件発明1は,・・・「全ての前記平面座標点毎の色度および不透明度を該視線毎に互いに積算する」ことにより,・・・,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現しつつ,相異なる生体組織を明確に区別することが可能な可視画像を生成し得る医療用可視画像の生成方法を提供することを目的とするものである。

 これに対し,被告方法においては,・・・積算処理は・・・閾値に達した時点で打ち切られるため,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現する観点からは,画質に対して悪い影響を与えるものである。被告方法による可視画像の生成は,本件発明1の方法によるほど生体組織を明確に区別するという作用効果を奏するものとはいえないものと解される。

 したがって,被告方法は,本件発明1の目的を達し,同一の作用効果を奏するとまではいえないものであるから,均等の第2要件を欠くものである。
posted by ごり at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

均等論第5要件の判断事例

事件番号 平成24(ネ)10035
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年09月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人、齋藤巌


ウ 第5要件
(ア) 前記(1)のとおり,本件明細書によれば,従来技術は一部のボクセルに関するデータを「間引いて」演算を行っていたため,可視化した画像において,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現することができなかったことから,上記課題を解決する手段として,本件発明1は,「全ての」前記平面座標点毎の前記色度及び前記不透明度を該視線毎に互いに積算し,当該積算値を当該各視線上の前記平面座標点に反映させることを特徴とするものである(【0006】〜【0008】)。

 仮に控訴人が主張するように,従来技術に係る「間引いて」の反対語が「間引かずに」ということであれば,出願人において特許請求の範囲に「間引かずに」と記載することが容易にできたにもかかわらず,本件発明1の特許請求の範囲には,あえてこれを「全て」と記載したものである。このように,明細書に他の構成の候補が開示され,出願人においてその構成を記載することが容易にできたにもかかわらず,あえて特許請求の範囲に特定の構成のみを記載した場合には,当該他の構成に均等論を適用することは,均等論の第5要件を欠くこととなり,許されないと解するべきである。
(イ) 以上のとおりであるから,仮に控訴人の主張を前提とすると,客観的にみて,意識的に「全て」に限定したものと解され,均等の第5要件も充足しないこととなる。
posted by ごり at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2012年10月14日

新規事項の追加であるとした事例

事件番号 平成23(行ケ)10351
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、田邉実

 本件補正は,請求項1の特許請求の範囲に,一対の冷蔵室扉のうちのいずれか一方の後面(背面)に製氷室を取り付けるとの限定を加えるものであるが,願書に添付された当初明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,冷蔵室扉よりも後方(内側)に位置する冷蔵室の内部に製氷室を設けることが記載されているのみで,扉自体に製氷室を内蔵させることは記載も示唆もない。また,当初明細書に添付の図面を見ても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成を見て取ることができない

 この点,原告は,当初明細書の段落【0019】,【0020】中で,かかる技術的事項(限定事項)が開示されていると主張するが,段落【0019】には,「前記製氷室は,前記冷蔵室の内部に着脱可能に設けられる。」と記載されているのみで,冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構成が含意されていると見るのは困難である。
 段落【0020】にも,「前記扉の一側には,前記製氷室が備えられる。」との記載があるが,この1文に引き続いて,「前記冷蔵室を開閉する扉は,それぞれ異なる幅を有する。前記冷蔵室を開閉する複数の扉の先端には,それぞれガスケットが備えられ,扉が閉まった時,相互密着される。」との記載があることにかんがみると,上記「前記扉の一側」との文言も,冷蔵室の一対(複数)の扉相互間で構造に違いがあることに着目した表現であるとみるのが合理的であって,単に一対の扉のうちの片方の側(より正確にはこの片方の扉の後方(内側))に製氷室が位置することを意味するものにすぎないというべきである。したがって,上記「前記扉の一側」が冷蔵室の扉の後面(内側の面)を指すとか,上記段落が冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構成を意味するということはできない

 さらに,当初明細書の発明の詳細な説明に係る段落【0026】,【0031】,【0056】,【0060】,【0074】には,・・・。これら発明の詳細な説明の記載に照らしても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成が新たな技術的事項の導入でないと認めることはできない。
 結局,本件補正は当初明細書及び図面に記載された事項の範囲を超えた新たな技術的事項を追加するもので,当初明細書及び図面に記載された事項の範囲内でされたものではない・・・。
posted by ごり at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法17条の2