2013年04月14日

特許法102条1項と同条3項の関係

事件番号 平成21(ワ)23445
事件名 特許権侵害差止請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史,石神有吾

 そして,特許法102条1項は,侵害者の侵害行為がなければ権利者が自己の物を販売することができたことによる得べかりし利益(逸失利益)の損害額の算定方式を定めた規定であって,侵害者の侵害行為(特許権の実施行為)がなかったという仮定を前提とした損害額の算定方式を定めた規定であるのに対し,同条3項は,侵害者の特許権の実施行為があったことを前提として権利者が受けるべき実施料相当額の損害額の算定方式を定めた規定であって,両者は前提を異にする損害額の算定方式であり,一つの侵害行為について同条1項に基づく損害賠償請求権と同条3項に基づく損害賠償請求権とが単純に並立すると解すると,権利者側に逸失利益を超える額についてまで損害賠償を認めることとなり,妥当でないというべきであるから,原告日環エンジニアリングの上記損害賠償請求権(同条1項の類推適用に基づく損害額の損害賠償請求)と原告キシエンジニアリングの上記損害賠償請求権(同条3項に基づく損害額の損害賠償請求)とは,その重複する限度で,いわゆる不真正連帯債権の関係に立つものと解するのが相当である。
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コンビニコミックの原稿料と利用許諾の範囲

事件番号 平成23(ワ)35951
事件名 損害賠償
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史,石神有吾

(1) 被告が本件各作画を掲載した本件各コミックの増刷を発行したことは,前記争いのない事実等(3)アのとおりである。
 被告は,原告と被告は,原告が被告の依頼に基づいて本件各作画を制作し,被告において本件各作画を本件各コミックに掲載して利用することを許諾し,被告がその対価として本件コミック1については原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を原告に支払う旨の各合意(本件各合意)をし,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力が,本件各コミックの増刷分についても及んでいる旨主張するので,以下において判断する。
・・・
(3)ア そこで検討するに,前記(2)ア及びイの認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。
 そして,前記(2)アないしウの認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,
@ 本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,
A 被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったこと
が認められる。

 上記@及びAの事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。
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特許権者が第三者に通常実施権を設定した場合の独占的通常実施権者の地位

事件番号 平成21(ワ)23445
事件名 特許権侵害差止請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史,石神有吾

c これに対し被告は,本件特許権1については,被告キシエンジニアリングが晃伸製機に通常実施権を設定し,平成17年3月25日付けでその旨の登録がされていることからすると,原告日環エンジニアリングが本件特許権1の独占的通常実施権者であるとはいえないし,また,晃伸製機が同年9月5日に本件発明1を改良した発明の特許出願をしていることからすると(乙58),晃伸製機は本件発明1を利用していることは明らかであるから,原告日環エンジニアリングが本件特許権1の実施について事実上独占しているということもできない旨主張する。
 確かに,証拠(甲1,10,55)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許権1については,被告キシエンジニアリングが晃伸製機に通常実施権を設定し,平成17年3月25日に,晃伸製機を通常実施権者として,「範囲」を「地域日本国内,期間本契約の締結の日から本件特許権の存続期間満了まで 内容 全部」とし,「対価の額」を「無償」とする通常実施権の設定登録が経由されたことが認められる。

 一方で,前掲証拠によれば,原告キシエンジニアリングと原告日環エンジニアリングが平成15年7月18付け独占的通常実施権許諾契約書(甲8の1)を作成した当時の両原告の代表取締役社長であったBは,平成17年3月25日に晃伸製機に上記通常実施権の設定がされた当時も,引き続き原告日環エンジニアリングの代表取締役に在職し,上記通常実施権の設定及びその設定登録を了承していたことが認められる。
 そして,特許法77条4項は,専用実施権者は,特許権者の承諾を得た場合には,他人に通常実施権を許諾することができる旨規定しており,同規定は,専用実施権者が第三者に通常実施権を許諾した場合であっても専用実施権を有することに影響を及ぼすものではないことを前提としているものと解されるものであり,かかる規定の趣旨に鑑みれば,特許権者が独占的通常実施権を許諾した後に,その独占的通常実施権者の了承を得て,第三者に通常実施権を設定した場合には,通常実施権が設定されたからといって直ちに当該独占的通常実施権者の地位に影響を及ぼすものではないというべきである。

 また,本件においては,原告キシエンジニアリングが原告日環エンジニアリング及び晃伸製機以外の第三者に本件特許権1の実施権を許諾していることをうかがわせる証拠はなく,また,晃伸製機が本件特許権1の特許発明の実施品を現実に販売していることを認めるに足りる証拠もないことに照らすならば,晃伸製機に対する上記通常実施権の設定によって,原告日環エンジニアリングによる本件独占的通常実施権1に基づく本件特許権1の実施についての事実上の独占が損なわれたものということはできない

 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
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2013年04月10日

動機付けや示唆がないとした事例

事件番号  平成24(行ケ)10168
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文 、裁判官 岡本岳,武宮英子

すなわち,引用発明においては,・・・,使用される針は,皮下注射用の針ではなく,皮内注射に適した針であると理解される。また,引用発明は,注射器針の透過深度をコントロールするか調節するための装置を提供することを目的とし,それによって,皮内注射の間に患者に作用する軽い痛覚はより減少され,主として,繰り返される注射の場合に,患者に対する,より大きな痛み除去を確実にする効果を奏するものであることが認められる。

ウ 上記の認定によれば,本願補正発明は,熟練や経験のない人が皮内注射を行う場合でも患者が苦痛を感じることなく,かつ,経済的合理性に対する要望にも対処することを目的(解決課題)として.皮下注射用の針を用いて皮内注射を行うニードルアセンブリであるのに対し,引用発明は,皮内注射に適した針を用いて注射器針の透過深度をコントロールするか調整することにより,皮内注射の際の患者の苦痛を緩和ないし除去することを目的とした装置であるということができる。そして,上記の引用発明の目的からすると,引用例に接した当業者が,引用発明の「皮内注射を行うのに使用する針」,すなわち皮内注射に適した針を,敢えて,本願補正発明の「皮下注射用の針」に変更しようと試みる動機付けや示唆を得るとは認め難いから,当業者にとって,相違点に係る本願補正発明の構成を容易に想到し得るとはいえない

エ これに対し,被告は,@皮下注射用の針を皮内注射に用いることは,従来より慣用されており,「皮下注射用の針」が,大量生産され市場に広く流通しているのであれば,引用発明における「針3」として「皮下注射用の針」を選択することは,当業者が当然に試みることである,A引用発明において,内部に収容される内部円筒状ボディー6や針3の長さに合わせて,外部円筒状ボディー5の長さが決められるのであり,針3は,その全長に比して「短い長さ」分だけ表面20から突き出させて構成されるから,「針3」として,全長の長い「皮下注射用の針」を選択することの動機付けも存在する旨主張する。

 しかし,上記の引用発明の目的,及び,引用例に「・・・。」,「・・・。」と記載され(上記(1)イ ),注射を行う際の皮膚に対する押付け力はわずかなものとされていることにかんがみると,たとえ,皮下注射用の針を皮内注射に用いることが従来から慣用されている事実を認め得るとしても,引用発明の皮内注射に適した「針3」を,技術常識からみて皮膚への刺入に要する力がより大きいと理解される皮下注射用の針に変更する動機付けはなく,当業者が当然に試みることともいえない。このことは,皮下注射用の針が大量生産され市場に広く流通しているとしても同様である。よって,被告の上記主張は失当である。
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時機に後れた攻撃防御方法であるとした事例

事件番号 平成24(ネ)10030
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成25年01月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文 、裁判官 岡本岳,武宮英子

(イ) 以上のように,原審の受命裁判官は,第1回弁論準備手続期日において控訴人らに対し無効論の準備をするように指示し,控訴人らは,本件訴訟の提起(・・・)から2か月以上後の平成21年2月6日付け第1準備書面により,本件特許1及び本件特許2の請求項1,3,5について最初の無効主張を行い,同年6月12日付け準備書面(4)により請求原因に追加された本件特許2の請求項7,8については,追加から約3か月後である同年9月18日付け第8準備書面により最初の無効主張を行っている。そして,平成22年2月5日の第8回弁論準備手続期日において,受命裁判官は,本件各特許について無効理由の追加は原則として認めないとし,同年6月14日(本件主張期限)の第11回弁論準備手続期日におい当事者双方により技術説明が実施され,原審裁判所は,以後,侵害論についての主張立証の追加は認めないとしたものである。
 上記原審の審理経過によれば,原審裁判所が侵害論についての主張立証の追加は認めないとした平成22年6月14日(本件主張期限)は,本件訴訟の提起から1年6か月以上後で,本件特許2の請求項7,8が請求原因に追加されてから約1年を経過し,しかも,受命裁判官が無効理由の追加は原則として認めないとした第8回弁論準備手続期日からも4か月以上を経過しているのであるから,侵害論の主張を制限する期間として短すぎるとは認められない
 ・・・
 また,控訴人らは,505号明細書は米国特許明細書であるから,提出が後れたことはやむを得ないものであった旨主張する。しかしながら,本件主張期限(平成22年6月14日)は本件訴訟の提起から1年6か月以上後である上,505号明細書を主引用例とする無効主張が記載された第25準備書面の提出及び505号明細書の証拠申出がされたのは,更にその10か月以上後の平成23年5月9日であって,米国特許明細書であることを考慮しても,その提出がこの時期に至ったことにやむを得ない事情があったと認めることはできず,控訴人らの主張は理由がない。
 ・・・
 原審追加無効主張(・・・)及びこれらに係る上記各証拠は,いずれも本件主張期限から6か月以上も経過した後に提出されたもので,提出が当該時期となったことにやむを得ない事情は認められないから,控訴人らは,少なくとも重大な過失によりこれらの主張立証を時機に後れて提出したものというべきであり,かつ,これにより訴訟の完結を遅延させるものと認められる。したがって,原審追加無効主張を時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下した原審裁判所の判断に,誤りはない。
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2013年04月09日

相違点の数や適用すべき技術の数と容易性

事件番号 平成24(行ケ)10147
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香,知野明

4 取消事由4(本件発明の効果に係る判断の誤り)について
(1) 原告は,要旨次のとおり主張する
@ 本件発明と刊行物1に記載された発明との相違点のうち,特に相違点3及び4に係る発明特定事項は容易に想到し得るものではない。したがって,それぞれの発明特定事項を採用したことによって得られる本件発明に特有な効果も予測できないものである。
A 仮に,審決がいうように,刊行物1(甲1)に記載された発明に,甲第2号証ないし同第7号証の各公報に記載の技術を適用することにより,本件発明に想到することが不可能ではないとしても,これほどまで多くの技術を適用しなければ本件発明に想到できないというのは,通常の能力を有する当業者にとっては想到が著しく困難であることにほかならない

(2) 原告の上記@の主張については,前示のとおり,相違点3及び4に係る発明特定事項は容易に想到し得るものであり,そうである以上,相違点3及び4に係る発明特定事項を採用したことによって得られる効果もまた,当業者の予測の範囲内のものというべきである。
また,上記Aの主張については,そもそも,容易想到性の判断は,相違点の数や適用すべき技術の数に左右されるものではない
原告の上記主張はいずれも理由がない。
posted by ごり at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法29条2項