2013年05月28日

周知例の追加を手続違背としなかった事例

事件番号 平成24(行ケ)10199
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実

3 取消事由3(手続違背)について
 前記2のとおり,引用文献1記載発明に,審判長が拒絶理由通知で引用した引用文献2,3に記載の周知技術を適用することによっても,本願発明の容易想到性を肯定できる。なるほど,審決は,当業者が容易に相違点3を解消することができるとの判断を示す過程で,拒絶理由通知で引用していなかった引用文献4を引用したが,これは周知技術の認定の裏付けの一つとして掲げたにすぎず,上記のとおり引用文献2によっても同一の周知技術を認定することができる

 したがって,原告に対し引用文献4についての反論の機会を付与せずに,引用文献4を周知技術の認定の裏付けとして掲げた審決に手続違背の違法があるとはいえない。よって,原告が主張する取消事由3は理由がない。
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2013年05月26日

明示的示唆がない場合に組み合わせの動機づけを認めた事例

事件番号 平成24(行ケ)10183
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
特許法29条2項 動機付け

 また,原告は,エンコーダ自体は周知技術ではあるが,引用例にはエンコーダ等によりバンドの位置を自動的に測定することについて特段の示唆はないから,引用発明に,胸部圧迫装置に係る引用発明とはその機能が本質的に相違する周知例1ないし5の周知技術を適用する動機付けを認めることはできないと主張する。

 しかしながら,引用例には,引用発明の電気モータをマイクロプロセッサ回路により制御することを示唆する記載があるところ,自動的な制御を実現するためにはバンドの位置情報を把握することが必要であることは明らかであるから,エンコーダ等の測定機器を用いることについて,動機付けを認めることができる

 また,周知例1ないし5は,胸部圧迫装置に係る文献ではないが,エンコーダに係る周知技術は,幅広い技術分野にわたるものである上,人体の一部に巻き付ける帯状物の巻付け状態を把握するという目的において共通しており,当該目的のために胸部圧迫装置に適用することを妨げるものではないし,原告が主張する機能の相違も,引用発明と周知例1ないし5との技術分野の相違に伴う用途の相違にすぎないものである。
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確認の利益が認められないとされた事例

事件番号 平成24(ワ)2303
事件名 ドメイン名使用差止請求権不存在確認請求事件 
裁判年月日 平成25年02月13日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 小川雅敏,西村康夫

 すなわち,被告は,本件ドメイン名の登録に関し,原告とJPRSと間の法律関係を規律する本件登録規則(及びそれと一体をなす本件紛争処理方針及び本件手続準則)に則して,登録契約内容の変更(登録の移転)を求めているものであり,その主張する事由は,米国シティバンクの本件各商標に由来する権利又は正当な利益ではあるが,被告自身が本件各商標について,商標権や専用使用権を有することを主張するものではない

 したがって,仮に,本件訴訟において被告に本件各商標についての商標法上の使用差止請求権が存在しないことを確認してみても,被告が本件各商標について米国シティバンクから許諾を得ているという事実関係が本件ドメイン名の登録の移転を基礎付け得るものである以上は,原告の本件ドメイン名の登録に関するJPRSとの間の契約関係に基づく地位についての不安,危険は除去されないものといわざるを得ない。
 そして,原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に係る申立て以外に紛争はなかったのであるから,本件各商標の商標権に基づく本件ドメイン名の使用差止めという紛争は存在しなかったというほかはない。

 そうすると,本件は,判決をもって法律関係の存否を確定することにより,その法律関係に関する法律上の紛争を解決するものではないから,確認の利益が認められない

 この点,・・・,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるのが相当であったと解される。なお,当裁判所は,原告に対し,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるか否かを釈明したが,原告は訴えの変更をしなかったものである。

(3) 以上のとおり,本件訴えは,確認の利益がなく不適法であるから,却下を免れない。
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引用例の組み合わせを否定した事例

事件番号 平成24(行ケ)10181
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗,古谷健二郎
特許法29条2項

 また,甲2公報に開示された上記(1)の式は,甲1発明とは異なり,電流の条件に応じた式の使い分けをするものではないから,甲2公報に開示された式を甲1発明に適用するためには,甲1発明について,電流変化の状態に応じた条件分岐を取り除く変更を行う必要があるが,このような変更を行うと,甲1発明が対象とするアーク放電による発熱についての計算を行う(3)式の適用ができなくなり,甲1発明の果たしていた機能(・・・)を達成することができなくなる

 以上検討したところに照らすと,甲2公報に開示された式を甲1発明に適用することが容易に想到し得たとはいえない。
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2013年05月19日

実施可能要件を満たさないとした事例

事件番号 平成24(行ケ)10071
事件名 審決取消請求事件 
裁判年月日 平成25年02月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗,古谷健二郎
特許法36条4項

1 実施可能要件の判断
(1) 請求項7に係る本願発明は,(a)ウリジン,ウリジン塩,リン酸ウリジン又はアシル化ウリジン化合物,及び,(b)コリン又はコリン塩,の2成分を組み合わせた組成物が人の脳シチジンレベルを上昇させるという薬理作用を示す経口投与用医薬についての発明である。
 そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明に当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したといえるためには,薬理試験の結果等により,当該有効成分がその属性を有していることを実証するか,又は合理的に説明する必要がある

本願明細書には,例2として,アレチネズミに前記(a)成分であるウリジンを単独で経口投与した場合に,脳におけるシチジンのレベルが上昇したことが記載されているものの,(a)成分と(b)成分を組み合わせて使用した場合に,脳のシチジンレベルが上昇したことを示す実験の結果は示されておらず,(b)成分単独で脳のシチジンレベルが上昇したことを示す実験結果も示されていない。また,(b)成分であるコリン又はコリン塩を(a)成分と併用して投与した場合,又は(b)成分単独で投与した場合に,脳のシチジンレベルを上昇させるという技術常識が本願発明の優先日前に存在したと推認できるような記載は本願明細書にはない。

 そうすると,詳細な説明には,本願発明の有効成分である(a)及び(b)の2成分の組合せが脳シチジンレベルを上昇させるという属性が記載されていないので,発明の詳細な説明は,当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したということはできない。したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項に規定する要件を満たさない。この趣旨を説示する審決の判断に誤りはない。
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阻害要因を認めた事例

事件番号 平成24(行ケ)10198
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌
特許法29条2項 阻害要因

イ 引用発明の吊り下げ部について
 他方,引用発明は,袋体の上縁を構成する各シール部の外側のフィルム及びガセット折込体については,開口以外の部分についてシールすることが記載されていないだけでなく,そもそも,不要の構成と理解される。また,仮にその不要の構成が残されているとしても,フィルム及びガセット折込体のコーナの部分は内袋の直方体の上面上に沿うとされているから,吊り下げのために,不要な構成をあえて残し,さらに直方体の上面に沿わない構成として,吊り下げ用の空間を形成することは,引用発明における阻害要因となる。
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一致点を含む相違点の認定を,相違点の判断が適切に行われている限り,審決の結論に影響を与えないとした事例

事件番号 平成24(行ケ)10198
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌
特許法29条2項 相違点の認定

ア 本件審決の認定した相違点1のうち,「合成樹脂製フィルムによって形成された対向する一対の平面部及び谷折り線を備える2つの側面部を有する」,「側面シール部は,平面部と側面部の側縁部同士がシールされ」,「柱構造をとり,内容物である液体の充填時には前記袋体は直方体又は立方体に近い形状になり」の部分は,本件審決の認定した一致点と文言上重複している

イ しかし,一致点と重複する上記記載は,それぞれ「4方シール」,「柱構造」及び「袋体」の各構成を修飾する字句の一部に含まれるものであって,それぞれ,本件発明の課題との関係において,「4方シール」,「柱構造」及び「袋体」の構成を特定する技術的にまとまりのある一体不可分の事項である。
このように,技術的にまとまりのある一体不可分の事項である以上,対比すべき構成に,結果として,一致点が含まれること自体,誤りとはいえない。そして,認定された相違点1について,引き続いて行われる相違点の判断が適切に行われている限り,審決の結論に影響を与えるものとはいえない
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公然実施について、知り得る状況で実施されていれば足りるとした事例

事件番号 平成23(ワ)10693
裁判年月日 平成25年02月07日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮
特許法29条1項2号

ウ 原告は,一般人が「ナイトロテック処理」との表示を見たとしても,同処理の内容を具体的に認識することはできないと主張するが,公然実施について,当該発明の内容を現実に認識したことまでは必要ではなく,知り得る状況で実施されていれば足りると解すべきであり,また,その判断の基準は一般人ではなく当業者と解すべきである。そして,これを前提とした場合にその要件を満たすことは上記のとおりであるから,原告の主張には理由がない。
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2013年05月16日

商標登録が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めなかった事例

事件番号 平成24(行ケ)10274
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月06日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
商標法46条1項5号,4条1項7号

1 特許庁における手続の経緯等
 被告(請求人)は,平成23年10月11日,特許庁に対し,本件商標の登録を無効にすることを求めて審判の請求をし(無効2011−890088号事件),特許庁は,平成24年6月21日,「登録第4995445号の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決をし,その謄本は同月29日,原告(被請求人)に送達された。
・・・

第4 当裁判所の判断
1 原告は,
@ 審決には,・・・,事実認定の誤りがある,
A 後発的無効として商標法4条1項7号に該当するのは,商標の構成自体に公序良俗違反があることとなった場合に限定されるべきであり,そうでない場合であっても,同項6号,19号よりも公益性の高い事由でなければ公序良俗違反に当たらないと解すべきであるにもかかわらず,審決は,商標登録後,その登録後の事情いかんによっては,特定の者に独占させることが好ましくなった商標等について,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害すると評価しうる場合には同項7号に該当するとした上,本件商標は被告によって使用されるべき性格の商標になったこと,社会的混乱を生じさせたこと等の諸事情を根拠に,本件商標の登録が同号に該当する旨判断しており,法適用に誤りがある,
B ・・・
として,審決の本件商標に関する商標法46条1項5号,4条1項7号該当性判断には誤りがあると主張する。そこで,以下,検討する。
 ・・・
 ・・・上記のような当事者間の民事上の紛争や受検生等の混乱は,もっぱら当事者間の反目や当事者による本件商標の使用態様その他の行動に起因して発生したものというべきであり,本件商標登録によって生じたとは認められない。そうすると,仮に,被告の実用数学技能検定事業が何らかの公的性格を有するとしても,民事上の紛争等が発生していることを根拠として,本件商標が被告によって使用されるべき性格の商標になったとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害するようになったということはできない
加えて,本件商標の構成自体も社会的妥当性を欠くとはいえない。

したがって,本件商標登録が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めることはできない。

ウ これに対し,被告は,上記第3の2の(2)イ(ア)ないし(キ) 記載の諸事情を理由として,本件商標は被告によって使用されるべき性格の商標であり,その登録は,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害する旨主張する。
 しかし,本件商標のパテント料等に関する契約の有効性や当該契約に対する監督官庁の指導,本件商標権の譲渡に関して作成された合意書の効力(上記(ア),(ウ),(エ)) は,本件商標登録が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるか否かとは直接関係がない問題というべきである。
 ・・・
 そして,原告が被告の類似団体を創設し,被告が従前から使用していたロゴを用い,被告と同様の検定を実施して,受検者等に混乱を生じさせているから,強い悪性があるとの点(上記(キ)) については,仮に,原告の上記行為が被告ないし受検生等の権利,利益を侵害するとしても,このような事情は商標の使用態様の問題であって,本件商標登録自体の問題ではないから,これを理由として,本件商標登録後に商標法4条1項7号に該当するものとなったとはいえないと解すべきである。

関連事件:事件番号  平成24(行ケ)10274
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2013年05月07日

特許権者が特許発明を実施していなくても,同法102条2項を適用することができるとした事例

事件番号 平成24(ネ)10015
事件名 特許権侵害差止等本訴,損害賠償反訴請求控訴事件
裁判年月日 平成25年02月01日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 塩月秀平,芝田俊文,土肥章大,知野明

(ア) 特許法102条2項を適用するための要件について
 特許法102条2項は,「特許権者・・・が故意又は過失により自己の特許権・・・を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,特許権者・・・が受けた損害の額と推定する。」と規定する。
 特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには,・・・,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。このように,特許法102条2項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であって,その効果も推定にすぎないことからすれば,同項を適用するための要件を,殊更厳格なものとする合理的な理由はないというべきである。

 したがって,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり,特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在するなどの諸事情は,推定された損害額を覆滅する事情として考慮されるとするのが相当である。そして,後に述べるとおり,特許法102条2項の適用に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではないというべきである
 ・・・
 上記認定事実によれば,・・・,原告は,コンビ社を通じて原告製カセットを日本国内において販売しているといえること,被告は,イ号物件を日本国内に輸入し,販売することにより,コンビ社のみならず原告ともごみ貯蔵カセットに係る日本国内の市場において競業関係にあること,被告の侵害行為(イ号物件の販売)により,原告製カセットの日本国内での売上げが減少していることが認められる。
 以上の事実経緯に照らすならば,原告には,被告の侵害行為がなかったならば,利益が得られたであろうという事情が認められるから,原告の損害額の算定につき,特許法102条2項の適用が排除される理由はないというべきである。

 これに対し,被告は,特許法102条2項が損害の発生自体を推定する規定ではないことや属地主義の原則の見地から,同項が適用されるためには,特許権者が当該特許発明について,日本国内において,同法2条3項所定の「実施」を行っていることを要する,原告は,日本国内では,本件発明1に係る原告製カセットの販売等を行っておらず,原告の損害額の算定につき,同法102条2項の適用は否定されるべきである,と主張する。

 しかし,被告の上記主張は,採用することができない。すなわち,特許法102条2項には,特許権者が当該特許発明の実施をしていることを要する旨の文言は存在しないこと,上記(ア)で述べたとおり,同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられたものであり,また,推定規定であることに照らすならば,同項を適用するに当たって,殊更厳格な要件を課すことは妥当を欠くというべきであることなどを総合すれば,特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項を適用するための要件とはいえない。上記(ア)のとおり,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきである。

 したがって,本件においては,原告の上記行為が特許法2条3項所定の「実施」に当たるか否かにかかわらず,同法102条2項を適用することができる。また,このように解したとしても,本件特許権の効力を日本国外に及ぼすものではなく,いわゆる属地主義の原則に反するとはいえない。

実施可能要件を充足するとした事例

事件番号 平成24(行ケ)10020
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、 裁判官 井上泰人,荒井章光

ウ 被告は,原告が主張する蛍光体の効率を低下させる因子は,本件明細書には記載されておらず,そのほかの因子も存在するから,本件発明1の赤色蛍光体において,どの因子が重要で,どの因子が重要でないかは,当業者でも理解できないし,窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体には,化学組成により様々な結晶構造を有する蛍光体が存在するから,様々な種類の蛍光体の製造に当たり,確実に内部量子効率の向上をもたらす普遍的な製造方法は知られていないと主張する。

 しかしながら,前記のとおり,原告が指摘する各因子がいずれも蛍光体の効率を低下させるものであることは,本件出願時において当業者に周知の事項であったと認められるから,蛍光体を製造する際に,これらの因子について通常の試行錯誤を行うことは当業者の通常の創作活動というべきであって,当業者にとって困難なことということはできない。また,蛍光体化合物の種類によって,いずれの最適化方法を採用するかについて試行錯誤を行うことも,同様に,当業者の通常の創作活動というべきである。

(4) 小括
 よって,仮に,本件構成3について,個々の蛍光体の内部量子効率がそれぞれ80%以上であることが必要であると解するとしても,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が内部量子効率80%以上の赤色蛍光体を製造することができる程度の記載がされているものということができるから,本件発明1について,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足しないとした本件審決の判断は誤りである。
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2013年05月06日

サポート要件及び実施可能要件を否定した審決を支持した事例

事件番号 平成24(行ケ)10052
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平,裁判官 池下朗,古谷健二郎

2 本件発明2の特許請求の範囲において,昇温結晶化温度が128度以上,かつ,結晶化熱量が20mJ/mg以上という数値範囲は,いずれもシート層,すなわち,容器成形前の状態における物性値を規定したものと認められる。これに対し,本件明細書においては,上記1で認定したとおり,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の数値は,いずれも容器成形後の容器切り出し片を対象として測定されたものであり,明細書において,特許請求の範囲に記載された容器成形前のシート層に関する記載は認められない

 このように,本件明細書には,昇温結晶化温度及び結晶化熱量について,特許請求の範囲に記載された「シート層」の数値範囲を満たすことによって課題の解決が可能であることを示す直接的な実施例等の記載がなく,これとは異なる測定対象に係る数値しか記載されていないところ,本件明細書の比較例2(・・・)には,容器成形後の容器切り出し片について,昇温結晶化温度が127度,結晶化熱量が19mJ/mgの場合であっても容器側面の光沢がないと記載されている。すなわち,特許請求の範囲で構成する数値範囲から,容器成形によって,昇温結晶化温度が 1 度,結晶化熱量が1mJ/mg外れただけでも課題が解決できないことになるのであるから,本件発明2が本件明細書に記載されている,あるいは,本件発明2の「光沢」黒色系容器が本件明細書に実施可能に記載されているというためには,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値について,容器成形前のシート層と容器成形後の容器切り出し片との間で,当業者が通常採用する条件であればこれらの物性値が不変であるか,当業者が通常なし得る操作によりこれらの物性値の変化を正確に制御し得るか,あるいは,これらの物性値が変化しないような成形方法や条件が本件明細書に記載される必要があるというべきである。

 そこで検討するに・・・これに対し,原告提出に係る実験結果報告書・・・,被告提出に係る実験結果報告書・・・に照らすと,成形温度のみならず,成形時間や延伸の程度によっても,上記の物性値は変化するものと認められるのであって,当業者であっても,それらの物性値の変化を正確に予測したり,制御したりすることは容易ではないと認められる。さらに,上記の物性値が変化しないような成形方法や条件について,本件明細書には記載も示唆も認めない

 以上のとおりであるから,本件発明2は,技術常識を参酌しても,発明の詳細な説明によりサポートされているとは認められず,特許法36条6項1号の要件を満たさない。 また,本件明細書に,成形条件による上記の物性値の制御について記載や示唆がないことからすると,当業者といえども,本件発明2に係る光沢黒色系の包装用容器を製造することは容易ではないというべきであるから,本件発明2は,平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項の要件を満たさない。
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2013年05月01日

まとまりのある1個の技術としての周知技術の認定、文言が明確でない特許請求の範囲の解釈

事件番号 平成24(行ケ)10126
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌

3 本件審決の理由の要旨
・・・
イ 周知技術2:ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取り付けられるリング領域を通過する直前の段階で,潤滑油を噴射すること(周知例3及び4)
・・・

第4 当裁判所の判断
・・・
そうすると,シリンダ油を注油することが噴射に相当するとしても,シリンダ油を噴射する時期については,ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取り付けられるリング領域を通過する直前の段階で潤滑油を噴射する構成が含まれているものの,その構成のみが独立して周知例3記載の技術の持つ課題を解決するものではないから,上記構成をまとまりのある1個の技術として周知であると認定することはできない
 したがって,周知例3によって,周知技術2を認定することはできない。
・・・
 また,被告は,本件補正発明の特許請求の範囲には「ピストンリング手段がシリンダの噴射ノズルが取付けられるリング領域を通過する直前の段階で,潤滑油を噴射する」とは記載されていないから,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないとも主張する。

 特許請求の範囲の文言自体は,必ずしも明確ではないが,本件補正発明は,前記1のとおり,シリンダ油を特定の時間に各部に供給し,そのシリンダ油は,ピストンが上方向に移動する際,ピストンが潤滑箇所を通過する前にシリンダの表面上に分散されるようにして,シリンダ周面上にオイルを一層良く分散させ,オイルをより有効に利用することができるとともに,シリンダ寿命とオイル消費との関係を期待どおり改善することができるというものであるから,ピストンリング手段が前記シリンダの前記リング領域を通過する直前の段階でオイルミスト噴射を起動させるように制御手段が作動可能なものであると解することができる。したがって,被告の上記主張は理由がない。
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著作権登録の際の説明義務

事件番号 平成23(ワ)40129
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 高野輝久 ,裁判官 三井大有,志賀勝

第3 当裁判所の判断
1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について
(1) 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。

 しかしながら,文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって,原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。
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