2013年07月03日

臨界的意義のない本願発明の数値と技術的意義の異なる引用例の数値の対比

事件番号 平成24(行ケ)10165
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌


エ 相違点2の容易想到性
 前記のように,引用例2は,ティシュペーパーの取出し性の改善を目的とする点では本件補正発明と共通するものの,ティシュペーパー束が圧縮されていることを前提とするもので,ティシュペーパー束が圧縮されていないことを前提とする本件補正発明と,前提において相違する。そして,このような前提の相違に起因して,両者は,ティシュペーパーの取出しを妨げる静摩擦力の発生メカニズムが相違し,その大きさも異なるものである。そうすると,静摩擦力を規定する静摩擦係数についても,引用例2における板紙とティシュペーパーとの静摩擦係数の範囲を定めた意義は,本件補正発明におけるティシュペーパーとフィルムとの静摩擦係数の範囲を定めた意義とは全く異なるものである。このような静摩擦係数の意義の相違に鑑みれば,引用発明に,引用例2に記載された「ティシュペーパーと板紙との静摩擦係数0.4〜0.5」を組み合わせて,本件補正発明における「ティシュペーパーとフィルムとの静摩擦係数0.20〜0.28」を導き出すことは,困難である
・・・
(ウ) 被告は,本願明細書の表2によれば,静摩擦係数と使用途中の落ち込みとの関係は明らかでなく,さらに,0.20を下限値とする根拠はなく,出願人が感覚的に設定したものであると主張する。
 本件補正発明において,ティシュペーパーとフィルムとの静摩擦係数を0.2〜0.28とする技術的意義は,ティシュペーパー束が圧縮されていないことを前提とした取出し性に基づくものであるが,当該取出し性の改善は,静摩擦係数のみによって達成されるものではなく,本件補正発明が規定するその他の数値限定との連係によって達成されるものである。したがって,静摩擦係数単独で,機能性評価の結果と比較することに意味はない

 また,本件補正発明において,静摩擦係数の下限値0.20及び上限値0.28にどの程度の臨界的意義があるかは明らかとはいえないものの,引用例2の静摩擦係数とは技術的意義が異なる以上,引用例2に基づき相違点2に係る本件補正発明の構成を容易に想到することができるということはできない
posted by ごり at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法29条2項