2010年11月14日

パブリシティ権の線引−写真と記事の分量比を考慮した事例

事件番号 平成21(ワ)4331
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年10月21日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

1 争点1(原告のパブリシティ権侵害の有無)について
(1) パブリシティ権の意義
 人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,その氏名を他人に冒用されたり,みだりにその容ぼう等を撮影されたり,自己の容ぼう等が撮影された写真をみだりに公表されたりしない権利を有する最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁,同昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,同平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照。)。
 また,・・・,著名人の氏名,肖像は,顧客誘引力を有し,経済的利益,価値を生み出すものであるということができるのであり,著名人は,人格権に由来する権利として,このような経済的利益,価値を排他的に支配する権利(以下「パブリシティ権」という。)を有すると解するのが相当である。
 他方,著名人は,・・・社会の正当な関心事の対象となりやすいものである。そのため,著名人は,その著名人としての活動等が雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されることについて,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という観点から,これを容認しなければならない場合があるといえる。そして,そのような紹介記事等を掲載した雑誌等の販売に当たって当該芸能人等の顧客吸引力が反映される場合があるとしても,上記の観点から,著名人はこれを容認せざるを得ない場合がある

 以上の点を考慮すると,著名人の氏名,肖像を使用する行為が当該著名人のパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該著名人の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断するのが相当である。

 なお,上記の基準は,出版等につき顧客吸引力の利用以外の目的がわずかでもあれば,「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害とされることがないことを意味するものではなく,顧客吸引力の利用以外の目的があったとしても,そのほとんどの目的が著名人の氏名,肖像による顧客吸引力を利用するものであるような場合においては,上記の事情を総合的に判断した結果,「専ら」顧客吸引力の利用を目的とするものであるとしてパブリシティ権侵害とされることがあり得るというべきである。
 上記解釈を前提として,被告らが本件雑誌を出版,販売した行為が原告のパブリシティ権を侵害するものか否かについて,検討する。

・・・
(4) 以上のとおり,本件雑誌は,その表表紙の見出しの主要部分として原告の氏名が用いられてこれが大書され,表表紙及び裏表紙には,原告の顔写真や上半身,全身の写真が,ほぼ全面にわたって多数掲載され(・・・),原告の氏名及び肖像写真を利用して,購入者の視覚に訴える構成となっている(・・・)。
 また,本件雑誌の本文部分も,原告の写真が見開き2ページの全面(・・・)又は1ページの全面(・・・)若しくはほぼ全面(・・・)にわたって掲載され,記事部分がない(・・・),又は,記事部分がページの上部,下部等にわずかしかない(・・・)ページが大半(・・・)を占めている(・・・)。そして,証拠(甲1)によれば,これらの原告写真は,原告一人を被写体とし,又は,原告を被写体の中心として,原告の顔や上半身,全身をクローズ・アップで撮影したものであり,原告の肖像を独立して鑑賞の対象とすることができるものであると認められる。
 これに加えて,前記のとおり原告の氏名及び肖像は強い顧客吸引力を有すること,本件雑誌が上質の光沢紙を使用したカラーグラビア印刷の雑誌であることなどを併せ考えると,本件雑誌において,その人気ぶりが一種の社会現象となっている原告の本件来日時の芸能活動を紹介するという一面があったことは否定されないとしても,本件雑誌のように表紙及び本文の大部分において,原告の顔や上半身等の写真をページの全面又はほぼ全面にわたって掲載するような態様での原告写真の使用は,原告の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものと認められ,原告のパブリシティ権を侵害するものというべきである(・・・)。

 一方,本件雑誌中の,原告の写真よりも記事部分の方が多くを占めているページ(・・・)(・・・),原告の写真の他に共演者等の写真が掲載され,記事部分も相当程度を占めているページ(・・・)(・・・)に原告の写真を掲載したことや,原告の姿がごく小さくしか写っておらず,原告の肖像を独立して鑑賞の対象とすることができるものとはいえない写真(・・・)を掲載したことについては,原告の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものとまでは認め難いから,パブリシティ権を侵害したとは認められない
posted by ごり at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | パブリシティ権
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