2012年09月30日

特許法29条所定の要件について判断するにあたって審理の対象となる発明

事件番号 平成23(行ケ)10356
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、田邉 実
特許法29条2項

5 取消事由1(相違点の看過)について
 原告は,本願発明1と刊行1発明は,
@ 二価の鉄イオンの溶出源と
A 溶出を導く作用とが相違し,さらに
B 二価の鉄イオンを有酸素下で溶出するのか無酸素下で溶出するのか
という点においても異なっており,その技術思想が根本的に異なる発明であるが,審決はこれらの点について検討せず,相違点を看過していると主張
する。

 しかし,特許法29条所定の要件について判断するにあたって,審理の対象となる発明は,特許請求の範囲の記載に基づいて認定すべきものであるところ,平成23年6月21日付けの手続補正(甲11)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載によれば,本願発明1は,含有する成分,含有する成分の含有割合及び用途は特定されているものの,原告主張の上記@〜Bを特定していない。したがって,審決が刊行1発明と本願発明1の一致点及び相違点を認定するに当たり,上記@〜Bの点を挙げていないとしても,相違点を看過したということはできない
 ・・・
 これによれば,刊行1発明と刊行2発明は,いずれも海などの水域環境を改善するために用いられるものであって,水域環境保全という同一の技術分野に属するものである上,その手段として二価の鉄イオンを供給するものであり,機能が共通することが認められる。
 そして,このように,同一の技術分野に属し,機能が共通する複数の発明を組み合わせて併用を試みることは,当業者が通常行うことと解される。また,刊行1発明と刊行2発明とを組み合わせて併用するにあたり,刊行1発明における「二価鉄含有物質」及び「フルボ酸とフミン酸を含有する腐植含有物質」と,刊行2発明における「粉状鉄」及び「粉状炭」のこれら4成分の相互作用により,両発明がそれぞれ成立しなくなる等(例えば,二価の鉄イオンが供給できなくなる等)の事情が存在するとも認められない。そうすると,刊行1発明において,それと同一の技術分野に属し,機能が共通する刊行2発明を組み合わせて併用し,「粉状鉄」(すなわち,鉄粉)及び「粉状炭」(すなわち,炭素)をさらに含有する4成分からなる「鉄粉」混合物とすることは,当業者が容易に想到できることというべきである。また,「粉状鉄」(鉄粉)として,通常の鉄粉と認められる「鉄,及び酸化鉄を除く不可避的不純物を含む鉄粉」を用いることは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
posted by ごり at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法29条2項
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