2013年05月16日

商標登録が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めなかった事例

事件番号 平成24(行ケ)10274
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年02月06日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
商標法46条1項5号,4条1項7号

1 特許庁における手続の経緯等
 被告(請求人)は,平成23年10月11日,特許庁に対し,本件商標の登録を無効にすることを求めて審判の請求をし(無効2011−890088号事件),特許庁は,平成24年6月21日,「登録第4995445号の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決をし,その謄本は同月29日,原告(被請求人)に送達された。
・・・

第4 当裁判所の判断
1 原告は,
@ 審決には,・・・,事実認定の誤りがある,
A 後発的無効として商標法4条1項7号に該当するのは,商標の構成自体に公序良俗違反があることとなった場合に限定されるべきであり,そうでない場合であっても,同項6号,19号よりも公益性の高い事由でなければ公序良俗違反に当たらないと解すべきであるにもかかわらず,審決は,商標登録後,その登録後の事情いかんによっては,特定の者に独占させることが好ましくなった商標等について,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害すると評価しうる場合には同項7号に該当するとした上,本件商標は被告によって使用されるべき性格の商標になったこと,社会的混乱を生じさせたこと等の諸事情を根拠に,本件商標の登録が同号に該当する旨判断しており,法適用に誤りがある,
B ・・・
として,審決の本件商標に関する商標法46条1項5号,4条1項7号該当性判断には誤りがあると主張する。そこで,以下,検討する。
 ・・・
 ・・・上記のような当事者間の民事上の紛争や受検生等の混乱は,もっぱら当事者間の反目や当事者による本件商標の使用態様その他の行動に起因して発生したものというべきであり,本件商標登録によって生じたとは認められない。そうすると,仮に,被告の実用数学技能検定事業が何らかの公的性格を有するとしても,民事上の紛争等が発生していることを根拠として,本件商標が被告によって使用されるべき性格の商標になったとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害するようになったということはできない
加えて,本件商標の構成自体も社会的妥当性を欠くとはいえない。

したがって,本件商標登録が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めることはできない。

ウ これに対し,被告は,上記第3の2の(2)イ(ア)ないし(キ) 記載の諸事情を理由として,本件商標は被告によって使用されるべき性格の商標であり,その登録は,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害する旨主張する。
 しかし,本件商標のパテント料等に関する契約の有効性や当該契約に対する監督官庁の指導,本件商標権の譲渡に関して作成された合意書の効力(上記(ア),(ウ),(エ)) は,本件商標登録が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるか否かとは直接関係がない問題というべきである。
 ・・・
 そして,原告が被告の類似団体を創設し,被告が従前から使用していたロゴを用い,被告と同様の検定を実施して,受検者等に混乱を生じさせているから,強い悪性があるとの点(上記(キ)) については,仮に,原告の上記行為が被告ないし受検生等の権利,利益を侵害するとしても,このような事情は商標の使用態様の問題であって,本件商標登録自体の問題ではないから,これを理由として,本件商標登録後に商標法4条1項7号に該当するものとなったとはいえないと解すべきである。

関連事件:事件番号  平成24(行ケ)10274
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2013年03月10日

損害の発生があり得ないことを抗弁して、損害賠償を免れた事例

事件番号 平成24(ワ)6892
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成25年01月24日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮

(2) 損害の発生
ア 商標権は,商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに,商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり,特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。したがって,登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても,当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず,登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは,得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである(最高裁平成9年3月11日民集51巻3号1055頁参照)。

イ 本件で,原告又は原告子会社は,平成13年以降,大阪市内で「Cache」の名称の美容室を2店舗営んでおり,これらの店舗は,関西のヘアサロンを紹介した雑誌等を中心に広告宣伝されていたことが認められるが,これらの雑誌では同時に多数の美容室が紹介されており,原告又は原告子会社の店舗はそのうちの一つにすぎないことからすれば,本件商標が,関西圏においても他の美容室と差別化を図るほどの強い顧客吸引力を有していたとまでは認められないし,原告が,被告が営業する岐阜県岐阜市で店舗展開や営業活動をしていたとは認められず,美容室の商圏がそれほど広域には及ばないことも考え合わせれば,本件商標は,被告の営業する地域においては,一般需要者の間に知名度はなく,原告の営業としての顧客吸引力を有しないものであったといえる。
 また,被告は,その営業に被告標章2を使用していたものの,ことさら同標章を強調して広告宣伝していたような事情も見当たらず,被告の顧客は店舗周辺の住民が中心であったことからすれば,被告の売上げは被告自身の営業活動等によるものというべきであって,被告標章2の使用がこれに特に寄与したということはできない

ウ 以上認定した原告の営業の態様,被告の営業の態様,岐阜市と大阪市の距離関係等を総合すると,被告が,本件商標登録後に上記認定の限度で被告標章2を使用したことによって,原告には何らの損害も生じていないというべきであって,本件において,商標法38条3項に基づく損害賠償請求は認められない

別訴の不法行為による損害賠償は認容
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フランチャイズ事業のロイヤリティと商標の使用料相当額

事件番号 平成24(ワ)6896
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成25年01月24日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮

第2 事案の概要
 本件は,本件商標権を有する原告が,別紙被告標章目録記載1,2の標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」という。)を使用した被告の美容室の営業が原告の商標権を侵害したと主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,金44万1000円及びこれに対する不法行為の後である平成24年7月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお,原告は,被告標章1,2の使用等の差止め,廃棄も請求していたが,これらの請求については,訴えの取下げがされた。)。

第4 当裁判所の判断
・・・
(3) 損害額
ア 上記(1)イのとおり,被告は,本件商標が登録された平成23年9月30日から平成24年1月まで(4か月間)の被告店舗1での営業については,本件商標権を侵害したものと認められる。

イ 原告は,本件商標の1か月当たりの使用料相当額は3万5000円であり,同金額の損害が生じたと主張する。
この点,美容室のフランチャイズ事業の中には,1か月当たりのロイヤリティとして,10万円(「Beautissimo」),売上げの5%(「mod’s hair」),15万円(「Family Salon SEASON」)などと定めるものが認められるが,フランチャイズ事業の加盟金及びロイヤリティには,商標使用のみならず技術上及び営業上のノウハウ使用等の対価としての意味合いも含まれることからすれば,上記金額の全てを商標使用の対価とみることはできず,また,上記各フランチャイズはいずれも世界各国及び日本全国で事業展開されていることからすれば,本件商標の使用料相当額を上記フランチャイズと同等とみることもできない

 本件において,原告は子会社を通じて大阪府内で2店舗を経営しているところ,これらの店舗は雑誌で広告宣伝されていることが認められるが,その雑誌の多くは対象を関西圏に限定したものである上,そこでは多数の美容室が同時に紹介されており,原告又は原告の子会社の店舗はそのうちの一つにすぎないことからすれば,本件商標が,他の美容室との差別化を図るほどの強い顧客吸引力を有していたとまでは認められない。また,原告はフランチャイズ事業に専念している旨主張するが,その規模,事業計画等についても不明であり,具体的なフランチャイズ事業の内容等を認めるに足りる証拠は提出されていない。

 これらの事情に鑑みると,本件商標の顧客吸引力を高く評価することはできず,本件商標使用による損害額は,1か月当たり5000円とするのが相当である。
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2013年02月24日

権利濫用を認定した事例

事件番号 平成23(ワ)3460
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成25年01月17日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川康,西田昌吾

(1) 本件各商標について商標権者となるべき者
 ・・・本来,被告が出願し,その商標権者となるべきであるといえる(商標法3条1項柱書)。
 このように,・・・,原告が本件各商標権を有し続けることは,私企業たる原告の一存によって,公益法人として設立された被告の事業継続を不安定にさせ得る潜在的な危険があることを意味している。

 原告が本件各商標について登録出願し,商標権者であることを直ちに違法と評価するかはともかく,被告による独占的な使用を許諾する限りにおいて,かろうじて許容されてきたものといえる。すなわち,・・・,原告は,「日本漢字能力検定」などの事業を被告に引き継いだ以上,本件各商標の登録出願をした原告が,その商標権者であり続けるということは,これらの使用許諾が当然の前提となっているというべきである。
 原告は,・・・,最も重要な「日本漢字能力検定」の事業を被告に引き継いだ以上,原告のみが本件各商標を使用することは全く想定されていないというべきである。
 ・・・
(2) 被告による使用状況
 本件各商標は,その商標登録から現在に至るまで,被告の事業の中心である「日本漢字能力検定」の事業を表すもの(本件商標1,2),あるいはこれに付随する事業を表すもの(本件商標3)として使用されてきた商標であり,前記1(2)のとおり,受検者の増加に伴い,その旨一般にも広く認識されてきたといえる。

(3) 危険性の顕在化
 ところが,前記1(4)のとおり,原告は,平成21年11月以降,本件各商標権を,被告とは関係のない第三者に移転したり,被告に対して本件各商標の使用を中止するよう通告したりした上,ついには被告による本件各商標の使用差止めを求める本件訴えの提起にまで至った。このことは,まさに原告が本件各商標権を有することに伴う前記潜在的危険性を顕在化させたものであり,原告は,その権利保有及び行使が許容される根拠を自ら喪失させたといえる。しかも,前記1に認定の事実経過からすれば,原告が本件訴えを提起したのは,本件各商標権が自己に帰属していることを奇貨とし,被告からの損害賠償請求等への対抗策として利用するためといえるが,商標制度が保護すべき権利,利益とは,およそかけ離れた目的といわざるを得ない。

(4)まとめ
 以上のとおり,本件訴えにおける原告の請求は,本件各商標権が本来帰属すべき主体である被告の事業継続を危うくさせるものでしかなく,しかも,商標本来の機能とは関わりなく,被告からの損害賠償請求等への対抗策として本件各商標権を利用しているというのであるから,そこにもはや何らの正当性はなく,権利濫用に当たるというほかない
 したがって,原告が,本件各商標権に基づき,被告による本件各商標の使用差止めを求めることは許されない。
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2013年02月17日

商標法51条1項の解釈

事件番号 平成24(行ケ)10187
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌

第4 当裁判所の判断
1 商標法51条1項について
 商標法51条1項は,「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用…であって…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。同項の規定は,商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し,そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨のものであり,需要者一般を保護するという公益的性格を有するものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号同61年4月22日第三小法廷判決裁判集民事147号587頁参照)。

 商標法51条1項の上記のような趣旨に照らせば,同項にいう「商標の使用・・・であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには,使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同を生ずるおそれを有するものであることが必要であるというべきであり,そして,その混同を生ずるおそれの有無については,商標権者が使用する商標と引用する他人の商標との類似性の程度,当該他人の商標の周知著名性及び独創性の有無,程度,商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである。  

 そこで,まず,本件商標と使用商標との類似性を検討した上で,上記のような観点から,
@ 使用商標と引用商標との類似性の程度,
A 引用商標の周知著名性及び独創性の程度,
B 使用商標が付された商品と被告の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,
C 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
を総合して,使用商標の具体的表示態様が被告の業務に係る商品等との間に具体的に混同を生ずるおそれの有無について検討することとする。
・・・
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2013年02月09日

商標法4条1項7号の趣旨

事件番号 平成24(行ケ)10267
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月19日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌

(2) 本件商標
 本件商標は,「シャンパンタワー」を横書きした商標であり,指定役務は,第43類「飲食物の提供,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,テーブル・テーブル用リネンの貸与,ガラス食器の貸与,タオルの貸与」である(甲1)。
・・・
2 本件商標の商標法4条1項7号該当性
(1) 前記1認定のとおり,本件商標のうち「シャンパン」の部分は,・・・。これらの事実を総合すると,我が国において,「シャンパン」の表示は,「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして,一般需要者の間に広く知られていることが認められる。
(2) 本件商標は,「シャンパンタワー」なる商標であるところ,・・・,本件商標からは,「シャンパンタワー」のみならず「シャンパン」という称呼及び観念も生ずるということができる。
(3) ・・・,被告を始めとするシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により,「シャンパン」表示の周知著名性が蓄積・維持され,それに伴って高い名声,信用,評判が形成されているものであり,「シャンパン」という表示は,シャンパーニュ地方のみならず,フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっている。
 そして,前記1(4)に掲記の証拠によれば,「シャンパン」という表示は,我が国においても,ぶどう酒という商品分野に限られることなく一般消費者に対しても高い顧客吸引力が化体するに至っていることが認められる。
(4) 以上のような,本件商標の文字の構成,指定役務の内容並びに本件商標のうちの「シャンパン」の表示がフランスにおいて有する意義や重要性及び我が国における周知著名性等を総合考慮すると,本件商標を飲食物の提供等,発泡性ぶどう酒という飲食物に関連する本件指定役務に使用することは,フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する被告のみならず,法律により「CHAMPAGNE」の名声,信用,評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するものといわざるを得ない。
 よって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである


3 原告の主張について
(1) 原告は,商標の構成に着目した公序良俗違反ではなく主体に着目した公序良俗違反の場合には,当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについて,専ら商標法4条1項17号の該当性の有無によって判断されるべきであり,特段の事情がない限り,同項7号該当性の判断をする判断枠組みは誤りであるなどと主張する。

(2) なるほど,商標法4条1項7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について商標登録を受けることができないことを規定し,これは無効理由にも該当する(商標法46条1項1号)。同法4条1項7号は,本来,商標を構成する「文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形であるなど,公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に,そのような商標について,登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である。
 そして,同条は,出願人からされた商標登録出願について,当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに,類型を分けて,商標登録を受けることができない要件を個別具体的に定めていることに照らすと,当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては,特段の事情がない限り,他の条項(同項8号,10号,15号又は19号等)の該当性の有無と密接不可分とされる事情については,専ら当該条項の該当性の有無によって判断されるべきであることは,原告が主張するとおりであって,公益的な事項が問題になっていない私的な領域に関する場合にまで安易に同条1項7号を適用するのは相当ではない。

 しかしながら,そもそも,本件で問題になっているのは,本件指定役務に係る商標であるから,ぶどう酒又は蒸留酒に係る同項17号が問題になることはない。そして,「シャンパン」表示が特定の私人に帰属するものでなく,フランスの原産地統制名称であること,それゆえ,本件商標のような原産地統制名称又は原産地表示として著名な「シャンパン」表示を含む商標に係る紛争は,私人間の私的領域における紛争にとどまるものではなく,被告によって代表されるフランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者を始めとするフランス国民やフランス政府との関係での国際信義の問題であって,公益的な事項に関わる問題であることに鑑みれば,本件について同項7号を適用することが,同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈したものということはできない
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2012年12月16日

商標法53条1項の商品の品質の誤認を生ずる使用

事件番号 平成24(行ケ)10113
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
商標法53条1項

 使用商標3とほぼ同一と認められる「Goodwear」の文字のみからなる商標は米国で商標登録されているものの(甲26の3),使用商標3が我が国において商標登録されていないことは,当事者間に争いがない。また,「R」の記号は,登録商標の表示として,主として米国で用いられている記号であるが,我が国においても,登録商標の表示として使用されることも多く,一般の取引者,需要者においても「R」の記号を登録商標の表示として認識することも多いものと認められる(甲25の34〜42,弁論の全趣旨)。

 商標法53条1項の商品の品質の誤認を生ずる使用とは,商標が指定商品の種類を表示又は暗示する標章を含むものであるときに,指定商品と商標が実際に使用されている商品との間に相違がある場合,商標が表示する商品の品質が虚偽の事実を含む場合等をいうものと解される

 しかしながら,「○R(筆者注:○の中にR。以下同じ)」の記号を商標に付する行為は,これに接する取引者,需要者に当該商標が登録商標であるとの認識を与えるものの,登録商標であるか否かは,当該商標が付された商品の品質を示すものではないから,未登録商標に「○R」の記号を付しても,品質の誤認を生ずると認めることはできない

関連事件:
事件番号  平成24(行ケ)10188
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
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2012年12月02日

構成自体に公序良俗違反のない商標についての商標法4条1項7号と商標法4条1項6号,19号との関係

事件番号 平成24(行ケ)10065
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月15日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香,知野明
商標法4条1項7号,商標法46条1項5号,商標法4条1項6号,商標法4条1項19号

1 審決の取消事由に関する原告の主張
・・・
(1) 商標法4条1項7号は,社会公共の利益又は一般的道徳観念を害するおそれのある商標の登録を阻止することを目的としているところ,商標の構成自体に公序良俗違反のない商標が同条項に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。
 また,商標法46条1項5号は,商標登録後といえども,当該商標が同法4条1項7号に掲げる事由に該当する場合には,当該商標を無効とすることができると規定しているところ,商標法4条1項6号,19号が後発的無効事由とされていないことに照らすと,後発的無効事由としての公序良俗違反は,商標の構成自体に公序良俗違反がある場合に限られるか,少なくとも査定時の判断基準より限定して解釈すべきであり,同法4条1項19号の「不正の目的」(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他の不正の目的)より高い悪性が商標権者に存し,登録を維持することが著しく社会的妥当性を欠き,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,又は,新たな法令や条約に基づく規制等ないしこれと同視できる社会状況の変化により,公益に反することとなった場合に限られるというべきである。
 なお,商標法46条1項5号については,過去の一時期において当該無効事由に該当する事実が存在したとしても,審判手続における審理終結通知までに当該無効事由が消滅した場合には,当該商標を無効とすることはできないというべきである。


第4 当裁判所の判断
1 商標法4条1項7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について,不登録事由としているところ,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む場合のほか,そうでない場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,法律によって禁止されていたり,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反ていたり,特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地がある。

 そして,商標法46条1項5号は,商標登録がされた後,当該登録商標が同法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなったことを登録無事由として規定しているところ,商標登録後であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反するなどの特段の事情が生じた場合には,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地があるといえる

 上記のとおり,被告は,文部大臣(当時)による許可を受けて設立された公益法人であり,・・・。にもかかわらず,当時原告の代表取締役であり,被告の理事長でもあったDは,被告理事会の承認等を得ることなく,本件商標を含む,被告の名称ないし「日本漢字能力検定」に係わる商標を,原告名義で出願したり,出願人名義を被告から原告に変更するなどしていたものであって,そのこと自体,著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害すると評価する余地もある(・・・。)。
 このような経緯に加えて,Dは,・・・,Eと共に背任罪で起訴された上,被告から多額の損害賠償請求訴訟が提起された後,本件商標の登録名義を原告からAらに移転したり,被告に対して本件商標等の使用差止請求訴訟を提起したりするに至ったものである。さらに,DないしEは,本件商標等について,権利の取得・維持の実費相当額での被告への譲渡を拒み,これらを原告自ら使用する可能性に言及するなどしている。

 上記事情に照らすと,原告の前代表取締役D及び現代表取締役Eは,商標権者等の業務上の信用の維持や需要者の利益保護という商標法の目的に反して,自らの保身を図るため,原告が有する被告の名称ないし「日本漢字能力検定」に係わる商標を利用しているにすぎず,原告が,本件商標を指定役務について使用することは,被告による「日本漢字能力検定」の実施及びその受検者に対し,混乱を生じさせるものであり,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害するというべきである。 

(関連事件)
平成24(行ケ)10070 審決取消請求事件
平成24(行ケ)10069 審決取消請求事件  
平成24(行ケ)10068 審決取消請求事件 
平成24(行ケ)10067 審決取消請求事件 
平成24(行ケ)10066 審決取消請求事件 
平成24(行ケ)10064 審決取消請求事件 
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2012年11月24日

商標法4条1項7号該当性(一般道徳観念に反する)を否定した事例

事件番号 平成24(行ケ)10222
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権(HPは特許権となっているが誤り。)
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大,裁判官 部眞規子,齋藤巌

3 商標法4条1項7号該当性について
 前記2(1)アに認定したところによれば,・・・,本件審決は,本願商標は社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであると判断しているので,以下においては,本願商標を本件指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものといえるかどうかについて検討する。

(1) まず,前記2(1)アのとおり,本願商標は,「北斎」との筆書風の漢字と,葛飾北斎が用いた落款と同様の形状をした本件図形からなるところ,前記2(4)に認定した審判段階における原告の主張からすると,本願商標が商標登録された場合において,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることから,例えば,「北斎」との漢字文字のみからなる商標について,これが本願商標の禁止権の範囲に含まれるなどと主張することは,信義誠実の原則に反し許されないといわなければならない。

(2) また,前記2(2)のとおり,葛飾北斎の出身地である東京都墨田区や国内各地のゆかりの地においては,・・・,「北斎」の名称は,それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有している。したがって,原告が本願商標の商標登録を取得し,本件指定商品について,本願商標を独占的に使用する結果となることは,上記のような各地域における公益的事業において,土産物等の販売について支障を生ずる懸念がないとはいえない。
 しかしながら,前記(1)のとおり,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることからすれば,当該公益的事業の遂行に生じ得る支障も限定的なものにとどまるというべきである。

(3) さらに,前記2(2)のとおり,葛飾北斎は,日本国内外で周知,著名な歴史上の人物であるところ,周知,著名な歴史上の人物名からなる商標について,特定の者が登録出願したような場合に,その出願経緯等の事情いかんによっては,何らかの不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるため,当該商標の使用が社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反する場合が存在しないわけではない。
 しかしながら,原告による本願商標の出願について,上記のような公益的事業の遂行を阻害する目的など,何らかの不正の目的があるものと認めるに足りる証拠はないし,その他,本件全証拠によっても,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない。

(4) 以上のとおり,本願商標の商標登録によって公益的事業の遂行に生じ得る影響は限定的であり,また,本願商標の出願について,原告に不正の目的があるとはいえず,その他,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない本件においては,原告が飾北斎と何ら関係を有しない者であったとしても,原告が本件指定商品について本願商標を使用することが,社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものとまでいうことはできない
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2012年11月11日

商標法4条1項6号の解釈

事件番号 平成24(行ケ)10125
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本 岳,武宮英子

イ 審決は,「公的な機関である地方自治体を表彰するために用いられる都道府県、市町村の章は、制定時に告示が行われるものであり、そして、告示は、広く一般に知らしめるものであることから、商標法第4条第1項第6号にいう「著名なもの」として扱うのが相当である」(2頁17行〜20行)として,日南市章の実際の著名性について認定することなく,「著名なもの」と認めた

 しかしながら,商標法4条1項6号は,「国若しくは地方公共団体……を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」と規定しているから,同号の適用を受ける標章は「著名なもの」に限られると解すべきであり(告示された国又は地方公共団体を表示する標章が当然に著名なものとなるわけではない。),著名であるか否かは事実の問題であるから,告示されたことのみを理由として「著名なもの」とした審決の判断手法は,是認することができない
 そして,同号は,同号に掲げる団体等の公共性に鑑み,その信用を尊重するとともに,出所の混同を防いで取引者,需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものと解されるから,ここに「著名」とは,指定商品・役務に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていることを要すると解するのが相当である。
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商標法4条1項7号に該当するとした事例

事件番号 平成24(行ケ)10120
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本 岳,武宮英子
商標法4条1項7号

 「公的機関によって設置・運営される富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」と認識される本願商標について,一私人である原告の登録を認め,「建物の管理」,「土地の管理」,「建物又は土地の情報の提供」等を含む指定役務について,その使用する権利を専有させることは,国又は地方公共団体等の公的機関による,富士山の「世界遺産」に関連する施策の遂行を阻害するおそれがあると認められる。そして,これら施策の高度の社会公共性に鑑みれば,本願商標の登録を認めることは社会公共の利益に反するというべきであり,本願商標は,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと認められる。
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2012年10月08日

商標法3条2項該当性判断事例

事件番号 平成24(行ケ)10002
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月13日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、岡本岳、武宮英子

4 取消事由3(商標法3条2項該当性判断の誤り)について
・・・
(1) 審決は,「本願商標を付した商品の過去3年間の売上は5億円程度であって,また,商品の販売数量,シェア,広告宣伝の状況等について,本願商標の指定商品についての著名性を具体的に裏付ける証拠は何ら提出されていないに等しく,申立人の提出に係る証拠のみをもってしては,本願商標が請求人の業務に係るアパレル関連の商品を表示する商標として,我が国における取引者,需要者の間に広く認識され,自他商品の識別力を獲得したものということはできない。」旨判断した。

 上記判断は,本願商標が商標法3条2項の要件を満たすためには,その指定商品であるアパレル関連の商品について使用された結果,著名なものとして自他商品識別力を獲得したことを要するとの前提に立つが,この前提は誤りである

 すなわち,同項は,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,・・・商標登録を受けることができる。」と規定し,指定商品又は指定役務に使用された結果,自他商品識別力が獲得された商標であるべきことを定めていない。また,同項の趣旨は,同条1項3号から5号までの商標は,特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果,その商標がその商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので,このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をし得ることとしたものであるから,登録出願に係る商標が,特定の者の業務に係る商品又は役務について長年使用された結果,当該商標が,その者の業務に係る商品又は役務に関連して出所表示機能をもつに至った場合には,同条2項に該当すると解される

 そして,上記の趣旨からすると,当該商標が長年使用された商品又は役務と当該商標の指定商品又は指定役務が異なる場合に,当該商標が指定商品又は指定役務について使用されてもなお出所表示機能を有すると認められるときは,同項該当性は否定されないと解すべきである。
 ・・・
ウ 以上の事実を総合すると,原告が,本願商標を長年にわたってバイク関係やその他の多様な事業活動で使用した結果,審決時までに,本願商標は著名性を得て,バイク関係はもとより,それ以外の幅広い分野で使用された場合にも自他商品識別力を有するようになったといえる。そして,原告の子会社を通じて,本願商標を使用したアパレル関係の商品が長年販売されていることから,本願商標をアパレル関係の商品で使用された場合にも自他商品識別力を有すると認めるのが相当である。

 すなわち,審決時において,原告が本願商標を指定商品に使用した場合にも,取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができ,本願商標は出所表示機能を有すると認められる。
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商標法3条1項3号該当性判断事例

事件番号 平成24(行ケ)10002
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月13日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、岡本岳、武宮英子

2 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)について
・・・
 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴと(何人)もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決裁判集民事126号507頁[判例時報927号233頁]参照)。

 また,登録出願に係る商標が同号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(最高裁昭和61年1月23日第一小法廷判決裁判集民事147号7頁[判例時報1186号131頁]参照)。

 上記の観点から,本願商標が,同号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するか否かを検討する。

 上記1(1) 認定の事実によれば,本願商標は,欧文字「Kawasaki」が,・・・。このような外観からすると,本願商標は,単なる欧文字の「Kawasaki」の表記とは趣きを異にするから,一般人に,一義的に神奈川県川崎市を連想させるような表記ということはできない。
 また,上記1(2) 認定の事実によれば,・・・,「Kawasaki」,「KAWASAKI」等の欧文字に接した一般人が,通常,当該文字から同市を商品の産地,販売地として想起するとまでは認められない。
 さらに,上記1(3) 認定の事実によれば,本願商標のみに接した日本国内の18歳から69歳の男女1000人以上を調査したところ,半数以上がバイク関係を想起したとするのに対し,神奈川県川崎市を想起した者は総数の3.1%しかなかったこと,また,同(4) 認定の事実によれば,本願商標をアパレル商品に付した場合でも,これに接した日本国内の18歳から69歳の男女1000人以上を調査した結果,神奈川県川崎市を想起した者は総数の10.4%しかなかったことが認められる。

 以上を総合すると,本願商標が指定商品に使用されたとしても,需要者又は取引者において一般的に地名である神奈川県川崎市を想起するとはいえず,当該指定商品が同市において生産され又は販売されているであろうと一般に認識することもないというべきである。
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商標法制定附則3条1項

事件番号 平成23(ワ)15990
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月13日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、西田昌吾
商標法2条1項2号、法制定附則3条1項

2 法2条1項2号に関するその余の争点(争点2:被告は,原告営業表示が著名になる前から被告商号を使用する者であるか)について
そもそも,被告が昭和33年から被告商号に類似した「阪急住宅社」の名称で事業を開始したことを裏付ける客観的な証拠は全くない。
 ・・・
(3)法制定附則3条1号について
なお,法制定附則3条1号は,「3条‥‥の規定は,この法律の施行前(施行日:平成6年5月1日)に開始した次に掲げる行為を継続する行為については,適用しない。」とし,1号として「新法第2条第1項第2号に掲げる行為に該当するもの(同項第1号に掲げる行為に該当するものを除く。)」と規定している
 ・・・
 したがって,被告の行為が,平成6年5月1日以前に開始されており,かつ,これが継続された行為である場合は,法3条の適用はない(法2条1項1号に該当する場合は除く。)。
 ・・・
 そうすると,被告は,平成6年5月1日以前から,被告商号を営業表示として使用することを継続していたとは認めることができず,原告営業表示が著名になる前から被告商号を使用する者であるともいえない。
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2012年10月02日

第11類「LEDランプ」について不使用取消確定後の「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」についての不使用取消審判

事件番号 平成24(行ケ)10103
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人、荒井章光
商標法50条1項(商標法2条3項2号)

1 本件商標
(1) 本件商標(登録第4595454号)は,「エコルクス/ECOLUX」の文字を横書きしてなるものであり,平成13年8月24日に登録出願され,第11類「電球類及び照明器具」を指定商品として,平成14年8月16日に設定登録されたものである(甲1)。
(2) 原告は,平成21年4月14日,本件商標の指定商品のうち,第11類「LEDランプ」について不使用取消審判を請求した(乙1),同月30日,審判の請求の登録がされた(甲2)。特許庁は,・・・,第11類「LEDランプ」についてはその登録を取り消す旨の審決(以下「第2次審決」という。)をし,その後確定した(甲2)。

2 特許庁における手続の経緯
 原告は,平成22年6月14日,本件商標の指定商品のうち,「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」について,不使用取消審判を請求し,本件審判の請求は,同年6月30日に登録された(甲2)。
 特許庁は,これを取消2010−300652号事件として審理し,平成24年2月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その審決書謄本は,同月22日,原告に送達された。

3 本件審決の理由の要旨
 本件審決の理由は,本件商標の商標権者(被告)及び通常使用権者(株式会社アイリスプラザ)が,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,乾電池式LEDセンサーライト(光源にLEDを使用した照明器具。以下「本件商品」という。)の包装に本件商標を付したものを販売することにより,請求に係る指定商品について使用していた(商標法2条3項2号)から,本件商標の登録を取り消すことはできない,というものである
・・・

第4 当裁判所の判断
・・・
したがって,本件の争点は,本件商品が,第2次審決の確定により取り消された「LEDランプ」に該当しないといえるか否かである。

2 本件商標の指定商品についての使用の有無について
(1) 「LEDランプ」の意義
・・・
・・・,「LEDランプ」との用語は,本件審決が説示するようにLED電球類を指称するものに限定して使用されているものとは認め難く,むしろ,取引者により,現時点において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,前記Bの複数の使用例にみられるように,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されているものと認められる。
 そして,発光ダイオード(LED)を利用する歴史が浅いことを併せ考えると,このことは,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間においても同じであったものと推認される。
・・・
 したがって,本件商品は,上記のとおり,第2次審決の確定により前件審判の請求の登録の日(平成21年4月30日)に本件商標の指定商品から消滅したものとみなされる「LEDランプ」に該当するから,同日から本件審判の請求の登録の日(平成22年6月30日)までの間において,本件商標の指定商品に該当しない
 そして,被告は,上記期間内における本件商品に対する本件商標の使用のほかに,本件商標又はこれと社会通念上同一の標章を本件商標の指定商品について使用したとの事実を何ら主張立証していない。


次の事件も同趣旨
事件番号  平成24(行ケ)10102
裁判年月日 平成24年09月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
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2012年09月02日

消滅ブランドをイメージキャラクターとして採択し市場に浸透させた企業努力を保護すべきか

事件番号 平成24(行ケ)10173
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年08月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
商標法4条1項7号

 新インディアン社は,法的には旧インディアン社との連続性は何らない会社である上,・・・,原告は,何ら旧インディアン社と関係がない第三者であるとの評価を免れず,このような原告が旧インディアン社と共通の「Indian Motocycle(インディアン モトサイクル)」との部分を含む商号を採択し,旧インディアン社の商標と同一又は類似のものである原告表示を使用しても,旧インディアン社と離れて,「Indian Motocycle」ないし原告表示が,原告の略称として,ないしはその被服等の商品の出所が原告であることを示すものとして,需要者,取引者の間に知られるようになっていたということはできない。そうであれば,同様の第三者である被告が,同様に旧インディアン社の商標と類似のものである本件商標を出願しても,旧インディアン社との関係ではともかく,原告表示により展開されている原告の「Indian」商標のビジネスを妨害するものとはいえないことも明らかである。
・・・
 また,原告は,かつて存在したが長きにわたり消滅したブランドを何人かが自らのブランドのイメージキャラクターとして採択する行為は,何人かが採択するまでは自由競争の範囲内であって,何ら非難する余地のない行為であるが,何人かがこれを自己のブランドイメージキャラクターとして採択した後は自由競争ですますことはできず,そのかつて存在したが消滅したブランドをイメージキャラクターとして採択し,その企業努力を傾注して市場に浸透させたときは,その企業努力の成果は保護すべきものであって,その成果にただ乗りし,収奪し,企業努力を妨害する行為は,反社会的な行為であり許されないと主張する。

 しかし,原告が旧インディアン社に依拠した事業展開をしていたことは前記のとおりであり,原告も,旧インディアン社の有する潜在的な周知性に訴えてその営業上の信用を利用していたものである。原告は,自らのブランドのイメージキャラクターとしてかつてはオートバイのブランドとして周知であった「Indian」ブランドを採択したと主張するが,原告は,・・・,旧インディアン社の営業上の信用を利用していたものであって,自らのブランドのイメージキャラクターとして「Indian」ブランドを採択したとは到底認められない。原告の主張はその前提を欠くものである。。

 そうすると,本件商標により,原告が原告表示を使用した「Indian」商標のビジネスに事実上の影響を被っているとしても,それは,原告があえて旧インディアン社に依拠したビジネス展開を行ったことが招いた結果であり,原告に対する関係でみれば,被告の行為は自由競争の範囲内にとどまり,原告のビジネス展開を被告が妨害したものということはできず,本件商標の出願をもって,原告の業務の遂行を阻害し業務を妨害する意図でなされたものということもできない。
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2012年08月10日

登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用が認められた事例

事件番号 平成24(行ケ)10080
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人,齋藤巌
商標法50条

2 商標の使用の有無について
(1) 商標の同一性
 商標権者が指定商品について登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明した場合には,商標法50条による登録商標の取消しを免れることができるところ,本件商標と本件使用商標を対比すると,やや横長の四角形で上方の橙色から下方の黄土色にグラデーションが施された地色や,上方の「First Tap」の欧文字から下方の「Sirop d’erable Pur」の欧文字に至る文字や図形の構成は,以下の点を除いて,おおむね一致している。すなわち,本件使用商標にあっては,「Fine Maple Products」の語末の右下方に「TM」の欧文字が記載されていない点において異なるが,商標全体からみて微細な部分にすぎない
 また,本件使用商標には,「Sirop d’erable Pur」の欧文字の下方にシリアルナンバーや「Extra Light」等の欧文字等が記載されているが,これらは本件使用商標の下部において商品の番号や品質を付加して表示するものにすぎず,これらの表示自体が格別の出所識別機能を有するものではない

 そうすると,本件商標と本件使用商標とは,少なくとも外観においてほぼ同一のものであり,称呼及び観念においても社会通念上同一のものと認めるのが相当である。
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2012年07月22日

一見外観が類似する単語を組み合わせた商標の類否判断事例

事件番号 平成24(行ケ)10042
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平
商標法4条1項11号

 そこで,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とを比較対照すると,両者は,語頭からの6文字「POWERW」を共通にする。しかし,両者を構成する文字数は8文字ないし9文字と比較的少なく,このうちの2文字ないし3文字は全く異なっている。
・・・
スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえない。
・・・
上記の諸点を勘案すると,「POWERWEB」と「POWERWAVE」の類否の判断において,両者がいずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語を組み合わせた語であることや,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の自他商品識別力と「WEB」及び「WAVE」のそれとの相違を考慮することなく,それぞれを構成する文字の共通性のみを強調することは相当ではなく,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」の外観上の相違を軽視することはできないというべきである。そして,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」とは,語頭の「W」を共通にするのみであり,その他の文字及びその配列に共通性はない。
 以上によれば,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とは,外観において相違するというべきである。
 ・・・
エ 両商標の類否
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び観念において相違し,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと,また,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば,両商標は,外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものというべきである。
 したがって,両商標は類似しない。
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著名商標を含む商標を付した商品の出所の混同のおそれ

事件番号 平成23(行ケ)10436
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平
商標法商標法4条1項15号

(2) 上記認定の事実によれば,「BOSS/HUGO BOSS」商標は,フーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして,本件商標登録出願日及び現在において,海外及び我が国で著名となっているものと認められる。
 ここで,「BOSS」の欧文字は,2段に構成された「BOSS/HUGO BOSS」商標中で上段に顕著に表された部分であり,フーゴ・ボスAGが用いる多数のブランドの大部分で共通する部分であり,「BOSS/HUGO BOSS」商標の要部と認められる。「BOSS」の欧文字からは,「ボス」の称呼を生じ,「親分」「上司」の観念を生じる。

(3) 本件商標の取引の実情をみるに,・・・,被告は本件商標を付した小型ファン付き作業服を販売し,その開始は,本件商標の出願とほぼ同時期である。そのパンフレット(甲98)には,上方に大書された「クールボス」の文字の下方に,大きな文字で「涼しい」「作業服」との記載があり,・・・。「涼しい」を英語で「クール」と称することは一般的な認識であるから,この記載を見る者は,「クールボス」の文字中の「クール」の部分が「涼しい」に対応し,「ボス」の部分が「作業服」に対応するとの理解に誘導されることになる。「クール」の文字が説明的で出所表示機能を有しないのに対し,「ボス」の文字は,これから生じる「親分」「上司」の観念が作業服とは結び付かず,作業服を「ボス」と呼ぶこともないことからすると,本件商標からは,前記のように紳士服及び紳士用品の商品分野において著名な「BOSS/HUGO BOSS」商標を想起する可能性が高いといえる。

 このように,「BOSS/HUGO BOSS」商標がフーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして我が国において著名となっていること,作業服の購入者に男性が多いであろうことからからすると,「クールボス」の商標が付された作業服が販売されれば,その作業服がフーゴ・ボスAG又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあることになる。

(4) 被告は,「クールボス」の商標が付された作業服とフーゴ・ボスAGの紳士服及び紳士用品は,需要者及び販売経路が異なると主張するけれども,上記認定のとおり「BOSS/HUGO BOSS」商標はカジュアルウェアやスポーツウェアにも付されることからすれば,販売経路が接近する可能性を否定できない。上記認定にかかる「BOSS/HUGO BOSS」商標の著名性に鑑みると,本件商標を指定商品である「通気機能を備えた作業服,洋服,コート」に使用すると,「BOSS/HUGO BOSS」商標との間に混同を生じるおそれがあり,本件商標登録は,15号に違反してされたものと認められる。
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商標法4条1項11号該当性の判断事例-支配的な印象を与えない部分の抽出

事件番号 平成23(行ケ)10373
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文

 上記のとおり,引用商標の構成中,「fantasy LIFE」の部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできず,他方,「mabinogi/マビノギ」の部分から出所識別標識として固有の称呼を生じ,観念を生じ得るのであるから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分だけを抽出して本願商標と対比することは許されないというべきである。

 そして,本願商標と引用商標の構成部分全体を対比すると,両者は外観において著しく異なり,観念,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は類似しないから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。
posted by ごり at 20:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標法