2012年11月18日

失効した特許の表示を付す行為が品質等誤認惹起行為に該当するとした事例

事件番号 平成23(ワ)12270
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年11月08日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
不正競争防止法2条1項13号

4 争点3(被告によるウェブサイト上の記載が不正競争防止法2条1項13号[品質等誤認惹起行為]に該当するか)について
(1) 特許の表示
ア 前記1のとおり,被告は,少なくとも平成23年4月28日以前の一定期間,自社のウェブサイトにおいて,被告製品につき,「国際的な特許で保護されている」「特許を取得している専用のワイヤーである」との記載を付していた。この点,被告製品は,巻き爪矯正具につき,ドイツのP1 の発明の実施品であり,その発明は,かつてドイツ及び米国で特許を受けていたものであるが,本件米国特許は2004年(平成16年)1月15日に,本件ドイツ特許は2006年(平成18年)6月7日にそれぞれ失効した。

 一般に商品に付された特許の表示は,需要者との関係において,当該商品が特許発明の実施品であると受け取られるため,当該商品が独占的に製造,販売されているものであることや,商品の技術水準に関する情報を提供するものとして,「品質」(不正競争防止法2条1項13号)の表示といえる
 しかし,上記のとおり,被告は,被告製品につき,実際には特許発明の実施品ではなくなったにもかかわらず,国際的な特許で保護されている,特許を取得している専用のワイヤーであるといった表示を付し,少なくともいずれかの国・地域の特許発明の独占的実施品であるかのような情報を需要者に提供したものであるところ,かかる行為は,「品質」を誤認させるような表示をした不正競争行為(不正競争防止法2条1項13号)に該当するというべきである。

イ この点,被告は,「国際的な特許で保護」などの記載につき,被告製品が簡単には模倣できない高度な技術によることを示し,模倣品を用いて引き起こされる事故の防止を企図したものと読み取るのが通常である旨主張するが,上記表示をそのような限定した意味で受け取る理由はない。需要者にとって「品質」としての意味を持つ特許の表示に誤りがあった以上,不正競争防止法2条1項13号(品質等誤認惹起行為)の該当性は否定できず,その主張は採用できないというべきである。
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2012年11月03日

安定同位体比質量分析装置の分析結果に基づき原産地誤認表示が主張された事例

事件番号 平成22(ワ)47173
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月25日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 高橋彩,石神有吾
不正競争防止法2条1項13号

 原告らは,被告各商品の桜葉の原産地は「中国」であるから,被告各商品に「国産」ないし「伊豆産」と表示(被告各表示)をすることは,原産地誤認表示に当たり,被告らによる被告各表示を包装袋に付した被告各商品の販売行為及び被告各商品の広告に被告各表示をする行為は,不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為に該当する旨(請求原因(2)ウ及びエ)主張する。
 原告らは,被告各商品の桜葉の原産地が「中国」であることの根拠として,X社作成の平成22年6月8日付け本件分析試験報告書の分析結果を挙げるので,以下において,その分析結果の有効性ないし信頼性について検討する
・・・
(イ) 次に,本件分析試験報告書に係る判別方法による産地の判別は,産地別の安定同位体比データベースを基に算出された判別式によって行われているので,判別結果の有効性ないし信頼性は,産地別の安定同位体比データベースが信頼できるものかどうか,そのデータベースから算出された判別式が合理性のあるものかどうかに依存しているといえるものであり,これらの検討が必要である。
 具体的には,産地別の安定同位体比データベースの基礎データとされた検体を採取した具体的な地域,採取した検体の数,採取した検体の安定同位体比の分布状況等を確認し,これらを基に行われた産地別のグループ分けが適切なものであるか,安定同位体比の地理的な分布に明瞭な勾配があるかどうかを確認し,さらには,グループ分けの基準とされた判別式が合理的なものかどうかを確認する必要がある
・・・
 しかるところ,原告らは,本件分析試験報告書に係る産地別のグループ分けが適切なものであるか,安定同位体比の地理的な分布に明瞭な勾配があるかどうかを確認し得る分布図等のデータを提出していないから,グループ分けの基準とされた判別式,ひいてはその判別式によって導出された判別得点が合理的なものかどうかを確認することはできない
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不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」として保護され得る場合

事件番号 平成21(ワ)15343
事件名  不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月23日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮
不正競争防止法2条1項1号

(1) 争点2−1(原告商品の商品形態の周知商品等表示該当性)について
ア 商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品の形態が,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」として保護されることがあり得ると解される。
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不正競争防止法2条1項3号の保護対象−新たに開発された商品形態

事件番号 平成21(ワ)15343
事件名  不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月23日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮
不正競争防止法2条1項3号,不正競争防止法19条1項5号イ

ア 不正競争防止法2条1項3号の請求主体
 不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争行為としているが,その趣旨は,不正競争防止法における事業者間の公正な競争等を確保する(1条)という目的に鑑みれば,開発に時間も費用もかけず,先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して,投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは公正とはいえないから,そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。
 そして,同法19条1項5号イは,上記不正競争行為について,救済手段を与える期間を商品が最初に販売された日から3年に限定しており,その趣旨は,商品形態の開発のために投下した資本,労力について回収を終了し,通常期待し得る利益をあげた後については,商品の形態を模倣した商品の製造販売行為であっても,それが不正競争防止法による規制をもって対処しなければならない競争上の不公正を直ちに生じさせるものではないとの考えによるものと解される。

 このような規定及び趣旨によれば,同法2条1項3号による保護を受けるためには,新たな商品形態の開発がされた場合であることが必要であり,既に市場に流通している商品の形態と全く同一ではないにせよ,需要者において,新たな形態と認識させるところのないありふれた形態に関する違いがあるにすぎない商品については,同号による保護は予定されていないというべきである。
 したがって,自身又は他人が開発し,既に市場に流通している商品の形態に何らかの変更を加えて新たな商品として販売する者が,同号による保護を受けるのは,当該変更が新たな商品形態の開発といえる場合に限られ,当該変更前の商品と変更後の商品の形態が実質的に同一であって,需要者においてこれを新たな形態の商品として認識し得ないような場合には,当該変更により新たに商品形態の開発がされたとはいえず,同号による保護は受けられないというべきである。
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2012年10月14日

アンケート調査による商品表示の類似の裏付け

事件番号 平成23(ワ)12566
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月20日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、西田昌吾
不正競争防止法2条1項1号又は2号

 原告は,昭和29年10月30日,「正露丸」の商標登録をしたが,同商標登録に係る商標登録無効審判についての審決取消訴訟において,同商標登録は無効とされた。
 その理由は,遅くとも原告が上記商標登録をした当時,「正露丸」は,本件医薬品の一般的な名称として国民の間に広く認識されていたこと,ごく普通の書体で「正露丸」の文字に「セイロガン」の文字を振り仮名のように付記したにすぎない上記商標は,商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示したにすぎない標章であるということによる。
以上の事実によると,「正露丸」は,本件医薬品の名称として,遅くとも昭和29年ころまでに,普通名称となっていたということができる。

(2)「正露丸」の名称で本件医薬品を製造販売する他社の存在
平成18年当時,「正露丸」又は「SEIROGAN」の名称で本件医薬品の製造販売を行っていた業者は原告及び被告の他に少なくとも10社以上存在し,それらの商品の包装箱は,いずれも直方体であり,包装箱全体の地色が橙色である点で共通していた。
・・・
 原告は,原告各表示と被告各表示が類似することなどを裏付ける証拠として,インターネットを用いたアンケート結果に係る書証(甲59ないし62)を提出している。

 これらの書証によれば,原告が実施したアンケート結果の概要は,要するに,@ 回答者らに対し,被告商品(被告表示2の正面)を示して認識の有無等について質問した後,A 認識していると回答した約8割の回答者らに対し,原告商品を含むその他の本件医薬品の包装を見せて確認したところ,そのうちの約9割の者が原告商品と誤認していたというものである。

 そこで検討すると,上記アンケートの回答者らが,前記1の各事実,すなわち「正露丸」が単なる一般名称にすぎないこと及び原告以外にも本件医薬品を製造販売する業者が多数存在することなどを認識していたかについては全く明らかでない。そうすると,上記アンケートは,前記1の各事実を知らない回答者らが,被告表示2を見て本件医薬品に係る包装であると認識し,そこから本件医薬品に係る市場において大きな市場占有率を有する原告ないし原告商品を想起したにすぎないとみることも十分に可能である。
 したがって,上記アンケート結果が被告各表示について原告各表示と類似することなどを裏付けるものであるとはいえない


被告表示 原告表示
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2012年07月29日

商品等表示性が否定された事例

事件番号 平成22(ワ)41231
事件名 不正競争行為差止請求事件
裁判年月日 平成24年07月04日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大須賀滋
不正競争防止法2条1項1号

 そして,原告が原告商品の共通形態であると主張する原告商品の上記@及びAの形態は,同種製品である老眼鏡の形態(・・・)と比較して,これらと識別し得る独特の特徴といえるものではないと解される。

 したがって,原告商品の形態が独特の特徴的形態と認識されるためには,市場において,それが老眼鏡と同種商品ではなく,異なる種類の商品であることが明確に区別して販売され,需要者においてもそのように認識されていることが必要であり,そうでなければ,原告商品の形態は老眼鏡と同種の商品として,格別の形態的特徴を有しないものとして認識されることにならざるを得ない。そこで検討するに,上記のような市場における原告商品の取扱い及び

 老眼鏡と原告商品との機能上の共通点に照らせば,原告商品が,需要者において老眼鏡と明確に区別され,独特の形態的特徴を有するものと認識されるまでには至ってはおらず,原告の主張する原告商品の共通形態に商品等表示性を認めることはできない
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2012年06月24日

不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当する場合における告知者の過失の有無の判断事例

事件番号 平成22(ワ)5719
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年05月29日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

(4) 被告の過失の有無
 原告は,特許権侵害の告知が,特許が無効であるため,不正競争防止法2条1項14号の「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知」の不正競争行為に該当する場合における告知行為を行った告知者の過失の有無については,告知者が告知行為を行った時点を基準として,被告知者に現に示した特許発明(特許請求の範囲記載の発明)についての無効理由を前提に判断すべきである旨主張する。
 そこで検討するに,不正競争防止法2条1項14号の「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知」の不正競争行為を行った者の故意又は過失(同法4条)については,不正競争行為を行った時点を基準に判断すべきであり,これは,特許権侵害の告知が,特許が無効であり,又は特許に無効理由があるため,同号の不正競争行為に該当する場合も同様である。

 一方で,特許法128条は,「・・・」と規定し,確定した訂正審決の効力に遡及効を認めており,また,同法134条の2第5項は,特許無効審判における訂正請求について同法128条の規定を準用していることからすると,特許権侵害の警告等の告知行為を行った告知者は,仮に告知行為時点の特許請求の範囲記載の発明に無効理由があるとしても,告知行為後の訂正審判請求又は特許無効審判における訂正請求によって特許請求の範囲を訂正し,その無効理由を解消できるものと考えるのが通常であるから,告知行為後に訂正審判請求がされた場合において,当該訂正審判請求が同法126条1項,3項,4項の訂正要件を満たし,かつ,告知の対象となった製品が訂正後の特許請求の範囲記載の発明の技術的範囲に属するときは,その発明が独立特許要件(同法126条5項)を欠くとする理由(無効理由に相当)について告知行為を行った時点における過失の有無を判断するのが相当である。

 しかるところ,本件においては,・・・。
 以上を総合すると,被告の本件告知行為@,B及びEによる不正競争行為についての過失の有無は,各告知行為の時点で,別件判決2が判断した第2次訂正後の発明の進歩性欠如の理由(無効理由に相当)を前提に判断すべきである。これに反する原告の上記主張は,採用することができない。
 ・・・

イ 本件告知行為@,Bの時点における被告の過失の有無
 発明が引用発明から容易想到であったか否かを判断するに当たっては,・・・,相違点に係る構成の容易想到性が一応認められるとしても,当該発明がその構成から当業者の予測を超える顕著な作用効果を奏する場合には,そのような作用効果が顕著である点において,当該発明が引用発明から容易想到であったとはいえないから,当該発明は進歩性を有するものと解するのが相当である。
 以上を前提とすると,被告の過失の有無は,被告が,本件告知行為@,Bを行った時点において,別件判決2が認定判断する第2次訂正発明1の進歩性欠如の理由,すなわち,「第2次訂正発明1の構成の容易想到性」及び「第2次訂正発明1の作用効果が顕著でないこと」の両方について調査確認すべき注意義務に違反したかどうかによって判断すべきである。

 そこで,まず,第2次訂正発明1の作用効果が顕著でない点に関する注意義務違反の有無について判断することとする。
 ・・・
 しかし,本件告知行為@,Bの時点では,別件無効審判事件に係る無効審判請求がされておらず,被告は,原告が行った実験結果である甲15の1,5を見ておらず,その内容を認識していないこと,一般に,自己の採用する方法が当業者の技術水準であると考えるのは自然であることからすれば,被告が,本件告知行為@,Bの時点で,甲15の1,5のような実験条件での発明の効果についても検討し,あるいは調査確認することにより,第2次訂正発明1に顕著な作用効果を奏さない部分があることを認識し,又はこれを予測することは困難であったというべきである。

b 以上によれば,被告が,本件告知行為@,Bの時点で,被告において,別件判決2が第2次訂正発明1の作用効果が顕著でないとした点について調査確認をすべき注意義務違反があったものとはいえず,被告に過失があるものと認めることはできない。
 ・・・

ウ 本件告知行為Eの時点における被告の過失の有無
(ア) 平成20年3月10日,原告から別件無効審判事件に係る無効審判が請求され,本件特許の実施例である本件化合物を正孔輸送材料として使用した場合と比較例であるNPDを正孔輸送材料として使用した場合とで効果に大きな差異はないとする原告による実験結果(本訴甲15の1・無効審判甲7)と,同旨の韓国の大学による実験結果(本訴甲15の2・無効審判甲8)が証拠として提出された(・・・)。したがって,被告は,本件告知行為Eの時点(平成20年11月ころ)では,甲15の1,2を認識していたものである。

 しかし,被告は,平成20年5月に自ら再現実験(乙30の実験)を行い,本件訂正明細書に記載された実験結果と概ね同様の結果を得ていたものであり(・・・),別件判決2において,乙30(・・・)の実験結果についても,信ぴょう性を疑うに足る内容を見出すことはできないと認定判断(・・・)されている。また,甲15の1の実験及び甲15の2の実験と本件訂正明細書に記載された実験は,前記(ア)aで述べたように,実験条件に種々の相違点があったものである。なお,原告は,別件無効審判事件において甲15の5(無効審判甲13)を提出しているが,それが特許庁に提出されたのは平成20年12月10日であると認められること(・・・)に照らすならば,被告が甲15の5を認識したのは本件告知行為E後と認められる。仮に被告が甲15の5を認識していたとしても,本件訂正明細書の実験と実験条件に種々の相違点があったことは,甲15の1の実験,甲15の2の実験と同様である。

 そうすると,被告が,本件告知行為Eの時点において,甲15の1,2には洗浄方法等の実験条件に不適切な点があったため,実験結果が誤っていると考えたとしても,直ちに不合理な判断ということはできない

 以上によれば,被告が,本件告知行為Eの時点で,第2次訂正発明1に顕著な作用効果を奏さない部分があることを認識し,又はこれを予測することは困難であったというべきであるから,被告において,別件判決2が第2次訂正発明1の作用効果が顕著でないとした点について調査確認をすべき注意義務違反があったものとはいえず,被告に過失があるものと認めることはできない。
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2012年04月07日

不競法2条1項3号の請求主体の要件

事件番号 平成21(ワ)43952
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年03月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

イ 競法2条1項3号は,商品化のために資金や労力を投下した者の開発利益を,当該商品の形態を模倣するという行為を競争上不正な行為とすることにより保護することを目的とするものであり,このような目的からすれば,本号の不正競争につき損害賠償を請求することができる者は,当該商品を自ら開発,商品化した者又はこれと同様の固有かつ正当な利益を有する者と解すべきである。

 これを本件についてみるに,・・・。

 以上によれば,本件ジュースについては,その内容物,商品名,容器デザインのいずれについても,原告が独自の費用,労力を掛けてこれを開発,商品化したということはできない(原告は,本件ジュースが原告の開発,商品化した商品であることの根拠として,原告によるJANコード等の取得や,食品衛生法に基づく輸入届出,関税の納付をも主張するが,これらはいずれも本件ジュースの開発,商品化に関するものとはいえず,採用することができない。)。

 したがって,本件ジュースについて,原告は,自ら開発,商品化した者と認めることはできず,また,これと同様の固有かつ正当な利益を有する者と認めることもできないから,不競法2条1項3号の不正競争につき損害賠償を請求することができる者ということはできない。
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2012年03月31日

自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとして警告する場合の注意義務

事件番号 平成22(ワ)145
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年03月21日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

(3) 原告は,被告の本件掲載行為及び本件送信行為によって営業上の利益を侵害されたとして損害賠償を求めているから,被告の故意,過失について検討する。
ア 競争関係にある者が販売する商品について,それが自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとの疑念を持つ者が,当該販売者の取引先に対し当該販売者の商品は自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとして警告する場合には,これにより当該警告を受けた取引先が警告者による差止請求,損害賠償請求等の権利行使を懸念し,当該販売者の商品の取引を差し控えるなどして当該販売者の営業上の利益を損なう事態に至るであろうことが容易に予測できるのであるから,自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとの疑念を持つ者は,上記のような警告をするに当たっては,当該警告が不競法2条1項14号の「虚偽の事実」の告知,流布とならないよう,当該販売者の商品が自己の商品の形態を模倣した違法なものに該当するか否か,その前提として自己の商品の形態が法的に保護される形態に当たるか否かについて検討すべき注意義務を負うものと解するのが相当である。

イ 被告は,
 原告製品が発売された直後である平成21年10月5日に原告製品を購入し,同月9日にかけて,形状測定,車両側コネクターとの嵌合比較,目視比較,出力特性等の調査を行い,嵌合のための必然性のない部分も含めて原告製品の形態は被告製品の形態に完全に一致すること,出力特性,極性も同一であること,
 既に模倣品であることが判明していた台湾のGDL社製の製品と本体ユニット,車種別専用ハーネスの形態,出力特性等が完全に一致することを確認した結果,原告製品は被告製品の形態を模倣したものであると判断し,
 原告製品は被告製品を模倣した商品であり,原告の行為は不競法2条1項1号ないし3号の不正競争に当たるとして原告製品の販売の中止等を求める同月14日付けの通知書(甲1)を原告に対して送付したものの,原告から直ちに回答がなかったため,必要な調査を行い形態が完全に一致することを十分に確認した上で,対抗措置として本件掲載行為,本件送信行為を行ったものであり,被告の行為に違法性はなく,故意,過失もない旨主張
する。

 しかしながら,上記1で説示したように,被告製品の車種別専用ハーネス,本体ユニットにつき被告が原告により模倣されたと主張する形態は,商品の機能及び効用を確保するために不可欠な形態であるか,同種製品の一般的な形態であるから,原告が被告製品の「形態を模倣した」ということができないものである。それにもかかわらず,被告は,原告に模倣されたと主張する被告製品の形態について,ドライビングアシストコントローラー(スロットルコントローラー)という商品の機能及び効用を確保するために不可欠な形態に当たるか否か,また,同種製品の形態にどのようなものがあるかなど,被告製品の形態が不競法2条1項3号で保護される形態に当たるか,原告が被告製品の「形態を模倣した」といえるかを判断するに当たって当然に検討すべき事項に係る調査検討の有無,内容につき,何ら主張立証していないことからすると,被告が本件掲載行為,本件送信行為を行うに当たって上記注意義務を尽くしたものと認めることはできない。したがって,被告には過失が認められるというべきである。

 よって,被告は,本件掲載行為及び本件送信行為により原告が被った損害を賠償する責任を負う。
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2011年10月23日

法2条1項1号の商品表示と法2条1項3号により保護されるべき商品の形態

事件番号  平成22(ワ)9684
事件名  不正競争行為差止等
裁判年月日 平成23年10月03日
裁判所名 大阪地方裁判所  
裁判長裁判官 山田陽三

(1) 法2条1項1号の趣旨は,他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止することにあり,商品本体が本来有している形態,構成や,それによって達成される実質的機能を,他者の模倣から保護することにあるわけではない。

 仮に,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態を商品表示と認めると,商品表示に化体された他人の営業上の信用を保護するというにとどまらず,当該商品本体が本来有している形態,構成やそれによって達成される実質的機能,効用を,他者が商品として利用することを許さず,差止請求権者に独占利用させることとなり,同一商品についての業者間の競争それ自体を制約することとなってしまう。
 これは差止請求権者に同号が本来予定した保護を上回る保護を与える反面,相手方に予定された以上の制約を加え,市場の競争形態に与える影響も本来予定したものと全く異なる結果を生ずることとなる。
 これらのことからすると,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態は,同号の商品等表示には該当しないものと解するのが相当である。
 ・・・
 そこで検討すると,原告商品は,ざるとしての機能に加え,柔軟性があり,変形させることができるという機能もあり,これにより従来のざるにはない用途に用いることができるというものである。
 そうすると,柔軟性があり,変形させることができるという形態的特徴は,原告商品の機能そのもの又は機能を達成するための構成に由来する形態であり,上記(1)のとおり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態として,法2条1項1号の商品等表示には当たらないというべきである。
 具体的にみると,基本的形態として原告が主張する構成は,いずれも,柔軟性を持たせるための構成若しくは柔軟性があるという機能それ自体又はざるとしての機能を発揮させるための構成であり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態であるというほかない。また,使用時形態も,柔軟性があり,変形させることができるという機能の結果生じる形態であり,これも商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態,結果である。
 ・・・

 法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。被告は,原告商品の使用時形態は需要者が通常の用法に従った使用に際して認識することができる形状には当たらないとして,その他のざるとしての形態的特徴は,いずれも乙2ないし8に記載された原告商品に先行するざる又は水切りざるが備えている構成であるか又は周知の形態若しくはざる一般にみられるありふれた形態であると主張する。

 しかしながら,原告商品の使用時形態それ自体が,法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても,使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は,少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり,法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十分に考慮されるべきものである。


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2011年09月04日

生産の委託を受けた会社が他社に製品を供給した事例

平成22(ワ)2723 損害賠償請求事件  
平成23年08月25日 大阪地方裁判所
裁判長裁判官 山田陽三

 通常,生産を委託された場合に,同じ金型から製造した商品を委託した者以外の者に譲渡することが許されるとは考えにくいところである。仮に,A社が原告商品を他に供給してはならない旨の義務を課せられていなかったとしても,A社としては,原告商品を単に製造しているだけで,同商品の形態について,法2条1項3号の権利を有しない以上,A社が,日本国内で原告商品を販売することは,法2条1項3号に該当する行為というべきである。
 A社から原告商品と同じ商品を購入し,日本国内において販売する行為は,他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない場合を除き,同じく,法2条1項3号に該当するというべきである。
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2011年08月07日

不競法2条6項所定の「公然と知られていないもの」

事件番号 平成23(ネ)10023
事件名 損害賠償等請求控訴事件
裁判年月日 平成23年07月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

3 争点2(東衛産業,ディリー産業及び被控訴人は,光通風雨戸製造に関する営業秘密(不競法2条6項)を保有していたか)について
(1) 被控訴人は,本件情報2を含む光通風雨戸を構成するスラット等の部材及び部品の形状には,性能の向上のために様々な工夫が施されており,光通風雨戸の製品から新たにこれらの部材及び部品の図面を起こそうとすれば多大な費用や労力を要するから,これらの部品の形状に関する情報には非公知性があり,営業秘密(不競法2条6項)に該当する旨を主張する。

 しかしながら,市場で流通している製品から容易に取得できる情報は,不競法2条6項所定の「公然と知られていないもの」ということができないところ,本件製造販売契約に関連して東衛産業又はディリー産業から控訴人夢工房に対して交付された図面等は,本件情報2に係る部品に関するものに限られ,かつ,当該部品は,いずれも,光通風雨戸を組み立てるに当たって使用される補助的な部品で,前記2(2)及び(3)にも認定のとおり,一般的な技術的手段を用いれば光通風雨戸の製品自体から再製することが容易なものであるから,本件情報2は,不競法2条6項所定の「公然と知られていないもの」ということはできない
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2011年07月31日

変更を加えた後続商品に対する不正競争防止法2条1項3号の適用事例

事件番号 平成22(ワ)11899
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成23年07月14日
裁判所名 大阪地方裁判所  
裁判長裁判官 山田陽三


(1) 法2条1項3号は,他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為に当たるとしたものである。その趣旨は,法1条の事業者間の公正な競争等を確保するという目的に鑑み,開発に時間も費用もかけず,先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売し,投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは公正とはいえないから,そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。
 このことからすれば,最初に販売された日の起算点となる他人の商品とは,保護を求める商品形態を具備した最初の商品を意味するのであって,このような商品形態を具備しつつ,若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないと解すべきである。
 そして,仮に原告が主張するとおり,原告商品が原告先行商品の改良品や部分的な手直し品ではなく,新しい商品であるとすると,この場合に法2条1項3号による保護を求め得るのは,原告商品の形態のうち,原告先行商品の形態と共通する部分を除外した固有の部分に基礎をおくものでなければならないというべきである。
・・・

(3) 前記(2)からすると,原告が保護を求めている商品形態の構成の中心は,原告先行商品においても採用されていたものであると認めることができる。そして,原告先行商品と原告商品との形態上の差は,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができるほどの形状の差であるとは認められないか又は同種の商品に共通する何の特徴もないごくありふれた形状であるということができる。

 なお,原告商品と原告先行商品とでは商品の大きさが異なるから,そのことに由来する差違が存する。しかしながら,少なくとも全体的な商品の形態について従来品の形態を具備しながら,大きさのみを変更した場合に,従来品とは別の商品形態であるということはできない
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2011年03月21日

不競法2条1項3号違反による損害賠償の遅延損害金の法定利率

事件番号 平成22(ワ)8605
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成23年03月10日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

(7) 小括
 以上のとおり,不競法2条1項3号違反を理由とする原告の損害賠償請求は,34万8045円及びこれに対する不正競争の後(訴状送達の日)である平成22年1月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(なお,原告は,商事法定利率年分の割合による遅延損害金を請求するしかしながら,不競法2条1項3号違反による損害賠償請求権は,同法の規定する「不正競争 (他人の商品の 」形態を模倣した商品を譲渡する行為等)によって営業上の利益が侵害された場合に発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないしたがって,上記債権を商行為によって生じた債権(商法522条)又はこれに準ずる債権であると解することはできず,商事法定利率による遅延損害金を請求することはできない。)
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競争関係のない者を共同不法行為者として不競法2条1項14号違反の共同不法行為が成立するか

事件番号 平成21(ネ)10043
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成23年03月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

3 控訴人と被控訴人SNKとの競争関係が生じた時期について
 不競法2条1項14号の「競争関係」とは,現実に競争関係にある場合に限られず,将来現実化する関係で足りると解されるところ,前記前提となる事実経過記載の事実によれば,被控訴人SNKは平成13年8月1日以降,パチスロに関する事業を行っていたと認めることができるし,また,被控訴人SNK自身,本件書籍1の出版当時,パチンコ・パチスロ業界での事業展開を準備していたと主張している。

 そうすると,本件書籍1及び2が出版された平成15年4月10日及び同年9月10日当時において,被控訴人SNKがパチスロ遊技機の販売を行っていなかったとしても,競争関係が将来現実化する関係があったと認められるから,パチスロ遊技機の製造販売を業とする控訴人と競争関係にあったと認めるのが相当である。
・・・

5 被控訴人らと鹿砦社による外形的共同不法行為の成否について(被控訴人ら及び控訴人との間に競争関係のない鹿砦社を共同不法行為者として,不競法2条1項14号違反の共同不法行為が成立するか
 前記のとおり,被控訴人らは本件書籍1に記載された事実を流布し,被控訴人SNKは本件書籍2〜4に記載された事実を流布したものである。
 そして,鹿砦社は出版社であり控訴人とは競争関係にはないが,被控訴人SNKと控訴人が競争関係にあることは前記のとおりであり,被控訴人サミーと控訴人が競争関係にあることは当事者間に争いがない以上,鹿砦社に不競法違反が成立しなくとも,虚偽か否かは後記で判断するところではあるが,外形行為の観点からみれば,被控訴人ら各自の行為において不競法2条1項14号該当要件を満たす以上,この点においては所定の「不正競争」に該当し,他の要件を充足する場合には同法4条による損害賠償義務の成立は免れないものというべきである。被控訴人ら指摘の最高昭和43年4月23日第三小法廷判決・民集第22巻4号964頁は,共同行為者の加害行為について不法行為者が賠償の責めに任ずべき損害の範囲について判断しているものであって,本件に適切でない。

(原審)
平成21年04月27日 東京地方裁判所 平成19(ワ)19202
裁判長裁判官 清水節


イ 幇助者は,法律上,共同行為者とみなされる(民法719条2項)ものの,被告らが共同行為者とみなされるのは,あくまで出版行為を行った鹿砦社の行為についてであって,同社の当該行為は,不競法違反とは評価され得ないものであることは,前記のとおりである。
 そして,共同不法行為が成立するためには,各行為者の行為が当該不法行為の成立要件を満たしていることが必要であると解されるところ(最高裁昭和39年(オ)第902号同43年4月23日第三小法廷判決・民集22巻4号964頁参照),出版行為の主体である鹿砦社に不競法違反が成立しない以上,被告らは,不競法違反とはならない鹿砦社の出版行為の共同行為者とみなされるにすぎないから,不競法違反の共同不法行為は成立しないと解すべきこととなる。
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2010年12月29日

原告商品陳列デザインは「商品等表示」に該当するか

事件番号 平成21(ワ)6755
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成22年12月16日
裁判所名 大阪地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 森崎英二

1 争点1(原告商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示であるか)について
(1)ア 原告は,原告商品陳列デザイン1ないし3は,いずれも他店にない独自のものであって本来的な識別力があり,またベビー・子供服販売の業界トップの原告が長年にわたり使用してきたことから,二次的出所表示機能も十分獲得しているとした上で,主位的にはそれぞれ独立して,第1次予備的に原告商品陳列デザイン1及び2の組み合わせにより,第2次予備的に原告商品陳列デザイン1ないし3の組み合わせにより,原告の営業表示として周知又は著名であることを前提に,被告の行為が不正競争防止法2条1項1号又は2号に定める不正競争に該当する旨を主張している。

 本件における原告の不正競争防止法に基づく主張が認められるためには,主張に係る原告商品陳列デザインが,不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう商品等表示(営業表示)であることがまず認められなければなないが,そもそも商品陳列デザインとは,原告も自認するとおり「通常,・・・,などの機能的な観点から選択される」ものであって,営業主体の出所表示を目的とするものではないから,本来的には営業表示には当たらないものである(・・・。)。

イ しかし,商品陳列デザインは,・・・,本来的な営業表示ではないとしても,顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され,やがて営業主体を想起させるようになる可能性があることは一概に否定できないはずである。
 したがって,商品陳列デザインであるという一事によって営業表示性を取得することがあり得ないと直ちにいうことはできないと考えられる。

ウ ただ,商品購入のため来店する顧客は,売場において,まず目的とする商品を探すために商品群を中心として見ることによって,商品が商品陳列棚に陳列されている状態である商品陳列デザインも見ることになるが,売場に居る以上,・・・など,売場を構成する一般的な要素をすべて見るはずであるから,通常であれば,顧客は,これら見たもの全部を売場を構成する一体のものとして認識し,これによって売場全体の視覚的イメージを記憶するはずである。

 そうすると,商品陳列デザインに少し特徴があるとしても,・・・,それは売場全体の視覚的イメージの一要素として認識記憶されるにとどまるのが通常と考えられるから,商品陳列デザインだけが,売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表示性を取得するに至るということは考えにくいといわなければならない。

 したがって,もし商品陳列デザインだけで営業表示性を取得するような場合があるとするなら,それは商品陳列デザインそのものが,本来的な営業表示である看板やサインマークと同様,それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要であると考えられる。
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2010年09月30日

不競法2条1項1号の他人の商品等表示

事件番号 平成20(ワ)25956
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成22年09月17日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

 ところで,不競法2条1項1号は,不正競争行為として,「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し,又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供して,他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を規定している。

 同号は,他人の商品表示(商品を表示するもの)又は他人の営業表示(営業を表示するもの)であって,「需要者の間に広く認識されている」もの,すなわち,他人の周知の商品表示及び営業表示(他人の周知の商品等表示)を保護するため,商品主体の混同を生じさせる行為及び営業主体の混同を生じさせる行為を不正競争行為として禁止する趣旨の規定であり,同号の商品表示は,商品の出所を他の商品の出所と識別させる出所識別機能を有するものであることを要すると解される。

 商品の形態は,本来的には商品の機能・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであり,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが,特定の商品の形態が,他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し,かつ,その形態が長期間継続的・独占的に使用され,又は短期間でも効果的な宣伝広告等がされた結果,出所識別機能を獲得するとともに,需要者の間に広く認識されるに至ることがあり得るというべきである。

 このような商品の形態は,不競法2条1項1号の他人の商品表示として需要者の間に広く認識されているものといえるから,同号によって保護される他人の周知の商品等表示に該当するものと解される。
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2009年04月20日

不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当しないとした事例

事件番号 平成20(ワ)5826
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成21年03月27日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 大鷹一郎

(3) 以上によれば,原告が原告商品に特有の形態的特徴であると主張する,タイの民族人形(ハッピーラッキーボンバー)の頭部のボンボンを股間部分に取り付けた点については,原告代表者が単独で発案したとまで認めることはできず,原告代表者及び被告の従業員Aが共同で発案した可能性を否定できない

 また,が原告商品に特有の形態的特徴であると主張する,頭部のボンボンを5oのものから1pのラメ入りのものとした点については,ライスフィールド社が,原告が原告商品を販売する前の平成19年4月24日ころには,頭部のボンボンをラメ入りのものとしたタイの民族人形を販売していたこと(前記1(2)),その当時輸入販売されていたタイの民族人形の頭部のボンボンには5oのものも,1pのものもあったこと(弁論の全趣旨)に照らすならば,原告代表者が発案した原告商品に特有の形態的特徴であるということはできない

 したがって,原告商品は,原告が独自に開発した商品であり,被告にとって不正競争防止法2条1項3号所定の「他人の商品」に該当するとの原告の主張は,理由がない
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2009年03月20日

不正競争防止法2条1項10号の「のみ」の解釈

事件番号 平成20(ワ)20886等
事件名 不正競争行為差止請求事件
裁判年月日 平成21年02月27日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 市川正巳


第3 当裁判所の判断
・・・
2 争点2(「のみ」要件)について
・・・
イ 解釈
(ア) 前記1(1)〜(3)及び上記(1)アの立法趣旨及び立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能」を有している場合を除外していると解釈することができこれを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる

(イ) 被告らは,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,検知→制限方式に限られ,平成11年改正法は,MODチップの販売等の規制を見合わせたものである旨主張するが,この主張に理由がないことは,前記1(6)で説示した点及び上記(ア)の立法経緯等から明らかであり,被告らの上記主張は採用することができない。

(2) 「のみ」要件該当性について
ア 前提事実(4)によれば,被告装置は,以上のように解された不正競争防止法2条1項10号の「のみ」要件を満たしている。

イ そして,この点は,被告装置の使用実態を併せ考慮しても同様である。すなわち,証拠(甲1〜21,29,30,32,34〜36,乙4〜13,丙1,12〜16,23〜34,42)及び弁論の全趣旨によれば,数多くのインターネット上のサイトに極めて多数の本件吸い出しプログラムがアップロードされており,だれでも容易にダウンロードすることができること,被告装置の大部分が,そして大部分の場合に,本件吸い出しプログラムを使用するために用いられていることが認められ,被告装置が専ら自主制作ソフト等の実行を機能とするが,偶然「妨げる機能」を有しているにすぎないと認めることは到底できないものである
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不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」の意義

事件番号 平成20(ワ)20886等
事件名 不正競争行為差止請求事件
裁判年月日 平成21年02月27日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 市川正巳

(原告らの主張)
ア不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」の意義
(ア) まとめ
 不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,電磁的方法によりプログラム等の実行を制限する手段であって,視聴等機器が特定の反応をする信号をプログラム等とともに記録媒体に記録する方式によるものをいい,その信号を検知した場合にプログラム等の実行を制限する方式(以下「検知→制限方式」という。)のものも,その信号を検知した場合にプログラム等の実行を可能とする方式(以下「検知→可能方式」)のものも含む。

(被告らの主張)
ア不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」の意義
(ア) まとめ
 原告らの主張ア(ア)は否認する。不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,検知→制限方式のものに限られ,自主制作ソフト等の実行も制限する結果となる検知→可能方式のものを含まない。


第3 当裁判所の判断
1 争点1(技術的制限手段)について
 ・・・
(4) まとめ
 上記(1)〜(3)によれば,不正競争防止法2条1項10号は,我が国におけるコンテンツ提供事業の存立基盤を確保し,視聴等機器の製造者やソフトの製造者を含むコンテンツ提供事業者間の公正な競争秩序を確保するために,必要最小限の規制を導入するという観点に立って,立法当時実態が存在する,コンテンツ提供事業者がコンテンツの保護のためにコンテンツに施した無断複製や無断視聴等を防止するための技術的制限手段を無効化する装置を販売等する行為を不正競争行為として規制するものであると認められる。
 そして,上記(3)のとおり,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,「(a)コンテンツに信号又は指令を付し,当該信号又は指令に機器を一定のルールで対応させる形態」と「(b)コンテンツ自体を暗号化する形態」の2つの形態を包含し,前者の例として「無許諾記録, 物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」が挙げられているが,この例は,本判決の分類では,検知→可能方式である。そして,同立法当時,規制の対象となる無効化機器の具体例としてMODチップが挙げられているが,このMODチップは,本判決の分類にいう検知→可能方式のものを無効化するものであり,当初から特殊な信号を有しない自主制作ソフト等の使用も可能とするものであった

 以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,検知→制限方式のものだけでなく,検知→可能方式のものも含むと解される

(5) 技術的制限手段該当性について
 前提事実(3)によれば,原告仕組みは,以上のように解された不正競争防止法2条7項の技術的制限手段に該当し,同法2条1項10号の営業上用いられている技術的制限手段によりプログラムの実行を制限するとの点も満たしている。

(6) 被告らの主張についての判断
 被告らは,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,検知→制限方式に限られ,自主制作ソフト等の実行も制限する結果となる検知→可能方式を含まない,平成11年改正法は,MODチップの販売等の規制を見合わせたものである旨主張する

 しかしながら,前記(3)イ(ア)及び(イ)のとおり,合同会議報告書や国会における審議においては,MODチップが存在し,そのプログラムの実行を制限する動作が原告仕組みによる制限の動作と同じ検知→可能方式のものであることが記載されており,前記(3)ア(イ)及びイ(ウ)のとおり,改正解説にも,国会における審議等ほどには明確ではないが,事業者が用いている技術的制限手段又は方式の例として,「○無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」や「MODチップ」が記載されている
しかも,平成11年改正法の立法過程で,自主制作ソフト等の実行を可能とすることに意義を認めるなどして,検知→可能方式のものを規制の対象からはずし,検知→制限方式のもののみを規制の対象としたことをうかがわせる証拠は見いだせない。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。
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